令和6年11月20日(水)に第12回新たな地域医療構想等に関する検討会において上記項目について話し合いが行われました。
医師偏在是正対策(案)についてまとめた内容は以下の通りです。
1.【医師偏在の現状】
我が国の医師偏在は依然として大きな課題となっています。医師偏在指標が下位1/3に該当する医師少数県は16県、医師少数区域は105区域存在しており、第7次医師確保計画(2020-2023年度)では、これらの地域での医師確保を目標としてきました。その結果、医師少数県の38%(6県)、医師少数区域の41%(43区域)が目標を達成したものの、多くの地域で医師不足が続いています。
特に35歳未満の若手医師については医師少数県での増加率が高くなっているものの、全年齢でみると医師数の地域間格差は依然として大きい状況です。また、2040年に向けた将来推計では、診療所医師の高齢化が進み、後継者不足により無医地区となる市区町村が増加する可能性が指摘されています。特に人口規模の小さい二次医療圏では、診療所数が減少傾向にあり、地域医療の維持が困難になることが懸念されています。
2.【これまでの主な対策】
(1)医師養成過程における対策
医師養成過程での主要な対策として、まず地域枠の設定が挙げられます。令和4年度時点で医学部定員の18.8%を地域枠が占めており、地域医療に従事する医師の育成を進めています。地域枠の学生の多くは、卒業後に一定期間地域医療に従事することを条件とした修学資金の貸与を受けており、地域定着率も高いことが確認されています。
また、臨床研修制度においては、都道府県別の募集定員の設定や、地域医療重点プログラムの新設などにより、研修医の地域偏在対策を進めています。専門医制度においても、都道府県別・診療科別の採用数に上限(シーリング)を設けることで、地域偏在・診療科偏在の是正を図っています。
(2)キャリア形成支援
都道府県は地域医療対策協議会での協議に基づき、9年間以上を対象期間とするキャリア形成プログラムを策定しています。このプログラムは、医師不足地域における医師の確保と、派遣される医師の能力開発・向上の両立を目指すものです。また、医師少数区域等での勤務経験を評価する認定医師制度を創設し、地域医療支援病院の管理者要件とするなど、インセンティブの付与も行っています。
(3)財政支援
地域医療介護総合確保基金やへき地医療対策予算により、医師確保対策や医療機関の運営支援を行っています。これらの財源を活用して、医師派遣体制の構築や、へき地医療拠点病院の運営、へき地診療所の支援などを実施しています。
3.【今後の対策の方向性】
(1)規制的手法
今後の規制的手法として、まず現在地域医療支援病院にのみ課されている医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件について、公的医療機関等への拡大を検討しています。また、外来医師多数区域における新規開業規制の強化や、保険医療機関の管理者要件の設定なども検討されています。これらの規制的手法の導入にあたっては、憲法上の職業選択の自由との関係や、新規参入抑制による医療の質への影響などにも配慮が必要とされています。
(2)経済的インセンティブ
特に医師確保が困難な地域を「重点医師偏在対策支援区域」として設定し、当該地域の医療機関や医師派遣を行う医療機関への重点的な支援を行うことが計画されています。具体的には、診療所の承継・開業支援、医師の処遇改善、派遣元医療機関への支援などが検討されています。また、診療報酬での対応も含めた総合的な支援策の構築が目指されています。
(3)その他の施策
中堅・シニア世代の医師を対象とした全国的なマッチング機能の支援や、都道府県と大学病院等との連携パートナーシップ協定の推進、リカレント教育の実施などが計画されています。特に、医師のキャリア形成支援と医師不足地域の医療提供体制の確保を両立させるため、各地域の実情に応じた柔軟な対応が重視されています。
4.【まとめ】
医師偏在対策は一つの施策だけでは解決できない複雑な課題であり、様々な対策を組み合わせて総合的に実施することが必要とされています。特に、今後の人口減少社会において地域医療を維持していくためには、若手医師の育成・確保に加えて、中堅・シニア世代の医師の活用や、医療機関間の連携強化など、多面的なアプローチが求められています。また、各地域の実情に応じた柔軟な対応も重要であり、都道府県が主体となって地域の関係者との協議を行いながら、実効性のある対策を進めていくことが期待されています。
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