令和6年11月15日に第112回社会保障審議会医療部会が行われており、上記「新たな地域医療構想の現時点の検討状況について」の報告がありました。
第112回社会保障審議会医療部会 資料 (令和6年11月15日)
主な内容は以下の通りです。
1.新たな地域医療構想の基本的な方向性
現行の地域医療構想は病床の機能分化・連携を中心としていましたが、これをバージョンアップし2040年頃を見据えた新たな医療提供体制の構築を目指します。具体的には、入院医療だけでなく外来医療・在宅医療、介護との連携等を含む医療提供体制全体を対象とした包括的な構想へと発展させます。
特に重要な点として85歳以上の高齢者の増加や人口減少がさらに進む2040年頃、そしてその先も見据え全ての地域・全ての世代の患者が適切な医療を受けられる体制の構築を目指します。このため、地域の患者・要介護者を支えられる地域全体を俯瞰した構想とし以下の3つの方向性で取り組みます:
- 地域の患者・要介護者を支えられる地域全体を俯瞰した構想
- 今後の連携・再編・集約化をイメージできる医療機関機能に着目した医療提供体制の構築
- 限られたマンパワーにおけるより効率的な医療提供の実現
また、医療DXや働き方改革の取組、地域の医療・介護の連携強化等を通じて、生産性を向上させ、持続可能な医療提供体制モデルの確立を目指します。
2.医療需要の変化
2040年に向けた医療需要の変化については、高齢者医療需要の増加、外来医療需要の変化、医療・介護の複合ニーズという3つの大きな特徴が見られます。
まず、高齢者医療需要については、85歳以上の高齢者を中心に大幅な増加が見込まれています。具体的には、85歳以上の救急搬送が2020年から2040年にかけて75%増加すると予測されており、同様に85歳以上の在宅医療需要も62%の増加が見込まれています。また、老人ホームからの救急搬送についても、令和3年(2021年)の約45万人から2040年には約67万人に増加すると予測されており、特に85歳以上の患者の増加が顕著となっています。
一方、外来医療需要については、すでに多くの地域で減少傾向に転じています。2020年までに224の医療圏で外来患者数がピークを迎えており、今後も減少傾向が続くと予測されています。ただし、外来患者の年齢構成は大きく変化し、2050年には65歳以上の患者が全体の約6割を占めるようになると見込まれています。
さらに、医療・介護の複合ニーズへの対応も重要な課題となっています。85歳以上の人口増加に伴い、医療と介護の両方のサービスを必要とする高齢者が増加していきます。要介護認定率は年齢が上がるにつれて上昇し、特に85歳以上では57.7%と高い水準となっています。このため、在宅医療と介護サービスを一体的に提供できる体制の整備が求められています。
3.医療機関機能の考え方
新たな地域医療構想では、地域における医療提供体制をより効果的に構築するため、4つの医療機関機能を設定しています。
第一の「高齢者救急等機能」は増加する高齢者の救急医療需要に対応するものです。この機能を担う医療機関は、高齢者等の救急搬送を受け入れるとともに、入院早期からリハビリテーションや退院調整を実施します。また、専門病院や介護施設等と密接に連携し、早期の退院と、その後の継続的なリハビリテーション等の提供を確保します。
第二の「在宅医療連携機能」は、地域における在宅医療の中核的な役割を担います。この機能を持つ医療機関は地域での在宅医療を実施するとともに、他の医療機関や介護施設等と連携し24時間の対応体制を確保します。また、必要に応じて入院対応も行い、地域住民の生活を医療面から支えます。
第三の「急性期拠点機能」は、高度な医療を提供する中核的な役割を果たします。手術や救急医療等の医療資源を多く必要とする症例を集約的に受け入れ、医療従事者の持続可能な働き方と医療の質を両立させながら地域の医療需要に応じた役割を担います。
第四の「医育及び広域診療機能」は主に大学病院本院が担う機能です。広域的な観点から医師の派遣を行うとともに医師の卒前・卒後教育や看護師の育成を担います。また、高度で専門的な医療など広域な観点が求められる診療を総合的に実施します。
4.構想区域について
新たな地域医療構想における構想区域の設定は、これまでの二次医療圏を基本としながらも、より柔軟で実効性のある区域設定を目指しています。
特に2040年を見据えた場合、人口20万人未満の地域等では、医療需要の変化や医療従事者の確保、医療機関の維持等の観点から必要に応じて構想区域を拡大することが検討されています。これは、限られた医療資源を効率的に活用し持続可能な医療提供体制を確保するための取り組みです。
在宅医療については、これまでの二次医療圏よりも狭い区域での議論が必要とされています。これは、在宅医療が地域密着型のサービスであり市町村が実施する在宅医療・介護連携推進事業との連携が不可欠だからです。地域の医療・介護資源の実情に応じて、より適切な区域を設定することが重要です。
また、医療機関と介護施設等の連携強化も重要な課題です。地域の医療関係団体、都道府県、市町村等が緊密に連携し地域包括ケアシステムとの整合性を確保しながら、効果的な医療提供体制を構築していく必要があります。
5.実施スケジュール
新たな地域医療構想の実現に向けて、段階的な実施が計画されています。
まず、令和6年度末までに制度改正の具体的な内容を検討し取りまとめを行います。この過程では医療部会への報告と継続的な検討を行いながら、各論についての詳細な議論を進めていきます。
令和7年度(2025年度)には、新たな地域医療構想に関するガイドラインの検討と発出を行います。このガイドラインでは、具体的な実施方針や運用方法について詳細に示される予定です。
令和8年度(2026年度)は、新たな地域医療構想の本格的な検討と策定の年となります。各地域での具体的な計画策定が進められ、関係者との調整や合意形成が図られます。
そして令和9年度(2027年度)から、新たな地域医療構想に基づく取組が開始されます。この時期は第8次医療計画の中間見直し後の取組とも連携しながら、PDCAサイクルによる進捗管理を開始し、継続的な改善を図っていくこととなります。
これらの取組を通じて、2040年に向けた持続可能な地域医療提供体制の構築を目指しすとされています。あとは病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援の在り方等について、法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得るとされていますので年末には確定内容が発表されると思います。
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