高齢者社会対策大綱が令和6年9月13日に閣議決定されました。
内閣府のホームページに大綱がアップされています。
高齢者社会対策大綱(令和6年9月13日閣議決定):内閣府
簡単にまとめますと高齢社会対策大綱における基本的考え方は、以下の3つから構成されています。
1.基本的考え方
【年齢に関わりなく希望に応じて活躍し続けられる経済社会の構築】
- 高齢者の体力的な若返りや長寿化を踏まえ、知識・経験を活かせる活躍の場を提供
- 個々人の状況に応じた多様な活躍機会の確保
- 若年世代も含めたスキルアップやデジタル技術活用による労働生産性の向上推進
【一人暮らしの高齢者の増加等の環境変化に適切に対応し、多世代が共に安心して暮らせる社会の構築】
- 高齢期を若年期からの延長線上として捉え、世代間の相互理解を促進
- 地域社会における様々な主体の連携による支援体制の整備
- 地域でのつながりや支え合いの促進による地域社会の持続可能性の確保
【 加齢に伴う身体機能・認知機能の変化に対応したきめ細かな施策展開・社会システムの構築】
- 高齢期を一括りで捉えず、個々の状況に応じた支援の実施
- 多様な実態やニーズに対応できる社会システムの構築
- 施策分野を越えた分野横断的な支援体制の確立
この3つの基本的考え方により超高齢社会において全ての世代が安心して暮らせる持続可能な社会の実現を目指すこととしています。
また、上記を踏まえ5つの主要分野について施策というか方向性の記載がありますが内容は以下の様になっています。
2.分野別の基本施策
【就業・所得分野】
就業・所得分野では、高齢者が希望に応じて働き続けられる環境の整備を中心に施策を展開する。リカレント教育の拡充やリスキリングによる能力向上支援を通じて、職業人生の長期化に対応した人材育成を進める。企業に対しては、65歳以上の定年延長や継続雇用制度の導入支援を行い、高齢者の雇用促進を図る。テレワークや副業・兼業の促進など、柔軟な働き方の実現も支援する。所得面では、公的年金制度の安定的運営に加え、iDeCoなどの私的年金の普及・充実、NISA等を活用した資産形成支援を行う。特に中小企業向けには、退職金共済制度の促進など、従業員の将来に向けた支援体制を整備する。
【健康・福祉分野】
健康・福祉分野では、予防から介護まで包括的な支援体制の構築を目指す。「健康日本21(第三次)」に基づく健康増進施策を展開し、特定健診・特定保健指導の実施率向上を図る。介護予防では、住民主体の「通いの場」を活用した取り組みを推進する。介護サービスについては、地域包括ケアシステムの深化・推進を図りながら、介護人材の確保と処遇改善、ICT・介護ロボットの導入促進による業務効率化を進める。特に重要な課題である認知症対策では、認知症サポーターの養成や早期発見・早期対応の体制整備、当事者や家族への支援強化など、総合的な施策を展開する。
【学習・社会参加分野】
学習・社会参加分野では、高齢者のデジタル活用支援を重点的に進める。全国各地でスマートフォン講習会を実施し、デジタル推進委員による相談体制を充実させることで、デジタル・デバイドの解消を目指す。教育面では、社会保障教育や金融経済教育の推進により、高齢期に向けた準備を支援する。また、消費者教育の強化により、高齢者の消費者被害防止にも取り組む。社会参加の促進では地域活動への参加支援や世代間交流の促進、NPO活動等の基盤整備を通じて高齢者の社会参加機会の創出を図る。
【生活環境分野】
生活環境分野では、住まい・移動・安全など、日常生活の基盤となる環境整備を進める。住まいについては、高齢者向け住宅の整備や空き家の有効活用、住宅のバリアフリー化支援など、多様な選択肢を提供する。まちづくりでは、地域公共交通の確保や自動運転技術の活用、コンパクトシティの推進によって、高齢者が暮らしやすい環境を創出する。安全・安心の確保では、避難支援体制の整備や防犯対策の推進、消費者被害の防止、交通安全対策の実施など、総合的な取り組みを展開する。特に、一人暮らし高齢者の増加を見据え、きめ細かな支援体制の構築を目指す。
【研究開発・国際展開分野】
研究開発・国際展開分野では、科学技術の活用と国際協力の推進を図る。研究開発では、介護ロボットやICT機器の開発、医療機器の研究開発、高齢者医療の研究推進などを重点的に進める。AI技術の活用研究も積極的に行い、高齢社会における課題解決に貢献する。国際協力では、世界で最も高齢化が進んでいる日本の知見と経験を活かし、アジア健康構想等の推進や開発途上国への支援を行う。また、高齢者自身を国際協力人材として活用することで、その知識と経験を国際社会に還元することも目指す。これらの取り組みにより国際社会における日本の貢献を高めていく。
3.推進体制について
上記の目的を達成するための推進体制については以下のよう考えられています。
高齢社会対策の総合的な推進は、高齢社会対策会議を中心に行われ、この会議では、大綱の実施状況のフォローアップや国会への年次報告の作成など、重要事項の審議を担当する。
推進に当たっては、内閣府や厚生労働省をはじめとする関係行政機関の緊密な連携・協力が不可欠で、また、地方公共団体も含めた関係機関の間で十分な調整を図りながら、施策を展開していく予定。
また、大綱の実効性を確保するため、各分野において数値目標と参照指標を設定し、政策評価や情報公開を推進しすることにより、効率的で国民に信頼される施策の実現を目指していく。特に重視されているのが、エビデンスに基づく政策形成であり、高齢化の状況や対策に関する情報の収集・分析・評価を行い、それらの情報を国民に提供していく予定。
さらに、高齢社会対策の推進には国民の理解と協力が不可欠とし、そのために広く国民の意見を反映させる仕組みを設けるとともに、効果的な広報・啓発及び教育活動を実施していく。特に地域レベルでは、地方公共団体が地域の特性を活かした施策を展開できるよう、企業・団体、NPO、地域住民等の多様な主体との連携を促進する。
なお、大綱は固定的なものではなく、経済社会情勢の変化等を踏まえ、おおむね5年を目途に必要な見直しを行うこととしています。これにより、常に実態に即した効果的な施策の推進を確保するとのことです。
これらの推進体制を通じて高齢社会対策の着実な実施と、その効果の最大化を図ることを目指すと記載されています。
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