電子処方箋の導入については医療DXの一環として厚生労働省が推進している施策ですね。
特設サイトもあります。
電子処方箋(一般の方向け)
医療機関・薬局向け、医療機関等検索サイト運営者向け
ちなみに定期的に電子処方箋の推進会議も行われています。直近で言うと令和6年9月11日に行われています。
第3回電子処方箋推進会議
この中の資料1「電子処方箋の普及拡大に向けた対応状況等」を簡単にまとめると以下の通りになります。
1.電子処方箋の導入状況
- 全国で30,609施設(14.6%)が電子処方箋の運用を開始
- 内訳は病院153施設(1.9%)、医科診療所3,645施設(4.5%)、歯科診療所150施設(0.3%)、薬局26,661施設(44.6%)
- 特に薬局の導入が進んでおり、店舗規模に関わらず3割以上が導入済み
2.電子処方箋の主な課題と対策
【費用の問題と支援策】
医療機関や薬局が電子処方箋を導入するには、システム改修などで費用がかかることが大きな課題です。そこで政府は、導入費用の最大75%(施設の種類や規模により異なる)を補助する制度を作りました。また、医療機関が電子処方箋を使うと診療報酬が加算される仕組みも導入し、経済的な負担を減らす工夫をしています。
【公的病院での導入状況】
国立病院や公立病院などの公的病院での導入を進めることが重要な課題となっています。現在、厚生労働省が管轄する病院の7割が2024年度中の導入を予定していますが、多くの病院で「電子カルテの更新時期に合わせたい」という理由で導入が遅れています。そのため、厚生労働労働省から各病院に対して積極的な導入を呼びかけている状況です。
【電子署名の課題解決】
処方箋には医師の署名が必要ですが、従来使用していた専用カード(HPKIカード)が不足していました。この問題を解決するため、マイナンバーカードでも署名できる仕組みを新しく作り、さらにリモートで署名できる方法も導入しています。また、わかりやすい操作マニュアルを作成して、医療関係者が使いやすい環境を整えています。
【システム対応の進展】
病院や薬局で使用するコンピューターシステムの開発会社の多くが、すでに電子処方箋に対応したシステムを提供しています。さらに、処方箋の再利用(リフィル)機能など、より便利な機能の開発も進めています。また、異なる会社のシステム間でもスムーズに情報をやり取りできるよう共通のルールを整備しています。
【普及に向けた広報活動】
医療関係者向けには、全国で説明会や講演を200回以上開催しオンラインでの説明会も行っています。一般の方向けには、アニメとタイアップした広報や、会社を通じたリーフレット配布を行っています。また、スマートフォンでも見られる地図で電子処方箋に対応した病院や薬局を簡単に探せるようにしています。さらに、各地域での導入状況もわかりやすく確認できるウェブサイトも公開しています。
3.電子処方箋普及により期待される効果
【薬の情報がすぐに共有できる】
これまでは紙の処方箋を使っていたため、患者さんがどんな薬を処方されているか医療機関や薬局の間で情報を共有するのに時間がかかっていました。電子処方箋になると処方や調剤の情報がリアルタイムで共有できるようになります。例えば、午前中に病院Aで処方された薬の情報は、午後に訪れた薬局Bですぐに確認することができます。
【重複投薬や危険な組み合わせを防げる】
複数の医療機関から薬をもらっている場合、同じような薬が重複して処方されたり一緒に飲んではいけない薬が処方されたりする危険がありました。電子処方箋システムでは、このような重複投薬や危険な薬の組み合わせを自動的にチェックできます。実際に、このチェック機能を使って問題のある処方を未然に防いだ事例が多数報告されています。
【過去の薬の情報も簡単に確認できる】
これまでは患者さんが持参するお薬手帳や、患者さんの記憶を頼りに過去の薬の情報を確認していました。この電子処方箋システムを使えば、過去5年分の薬の情報をすぐに確認できます。さらに、電子処方箋に対応した医療機関や薬局であれば、直近に処方された薬の情報まで正確に把握することができます。
【紙の処方箋の保管も楽になる】
薬局では法律で処方箋を長期間保管する必要がありますが、紙の処方箋を大量に保管するのは場所も取りますし、災害時の紛失リスクもありました。電子処方箋システムでは、紙の処方箋の情報も電子データとして保存することができます。さらに、この保存サービスは年間2,500円と安価で、必要な時にデータを取り出すことも簡単にできます。
このように、電子処方箋の導入により医療機関、薬局、そして患者さんにとって、より便利な薬の管理が可能になります。特に薬局では導入が進んでおり、患者さんの服薬情報の大部分が電子的に管理される日も近いと期待されています。後は医療機関側の普及率が上がることにより、より効率的な医療サービスの提供が可能になると思われます。
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