令和6年9月17日に厚生労働省の職業安定分科会労働力需給制度部会において職業紹介事業者に対する規制を強化する方針を決定しています。この規制強化は、特に介護や医療分野における人材紹介について問題視しています。
⾦銭等提供・転職勧奨禁⽌の職業紹介事業許可条件化について
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001304142.pdf
資料の要点は以下の通りです。
1.概要と目的
職業紹介事業における求職者への金銭等提供禁止及び就職後2年間の転職勧奨禁止について、職業紹介事業の許可条件とするとしています。この措置により、労働市場における適正な需給調整機能の確保することを目的としています。
2.主要な規制内容
(1) 転職勧奨禁止
- 職業紹介により就職した者(期間の定めのない労働契約を締結した者に限る)に対し、就職した日から2年間、転職の勧奨を行うことを禁止。
(2) 金銭等提供の制限
- 求職の申込みの勧奨において、お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて求職者に金銭等を提供することを禁止。
3.施行時期と実施方法
- 施行日:令和7年(2025年)1月1日(予定)
- 実施方法:新規許可・有効期間更新から順次、各月の許可・更新手続の機会を捉えて許可条件を付与。更新月到来前に違反があった場合は、指導を行うとともに許可条件を付与。
4.追加的対応の内容
(1) 法令順守徹底のためのルール強化
- お祝い金・転職勧奨禁止を職業紹介事業の許可条件化。
- 違反が継続・反復する場合は、許可取消の対象。
(2) 募集情報等提供事業における対応
- 労働者の登録から就職・定着までの全過程における金銭等の提供を原則禁止。
- 例外的に認められる場合。
例1) サービス利用者からのアンケート回答者への抽選による少額(500円程度)の電子ギフト券 等の提供。
例2) 転職フェア来場者等への少額(500円程度)の電子ギフト券等の提供。
5.雇用仲介事業の見える化施策
(1) 手数料実績の公開義務化
- 職種ごとの常用就職に係る平均手数料率の実績を人材サービス総合サイトに開示。
- 定額制の場合は料率ではなく定額を開示。
(2) 利用料金・違約金規約の明示義務化
- 募集情報等提供事業者に対し、利用者に誤解が生じないよう分かりやすい記載を義務付け。
- 違約金規約の明示は職業紹介事業者にも同様に求める。
6.法的根拠
- 職業安定法に基づく規制。(第32条の5による許可条件の付与。第32条の9による違反時の許可取消し等の措置。)
7.現行の許可条件との関係
本規制は、既存の許可条件(児童の紹介禁止、貸金業との兼業制限、事業所新設時の基準遵守、特定求人者への限定禁止、業務提携規制、国外職業紹介規制等)に追加される新たな条件として位置付けられます。
8.期待される効果
- 職業紹介市場における適正な需給調整機能の確保。
- 求職者保護の強化。
- 職業紹介事業の透明性向上。
- 違約金等に関するトラブルの防止。
今回の規制強化は、職業安定法の目的である「労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整」を実現するための重要な施策として位置付けられており、職業紹介事業の健全な発展に寄与することが期待されています。特に、金銭的誘因による市場歪曲の防止と、早期転職の抑制による安定的な雇用関係の構築を目指しています。
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