令和6年10月18日に「第3回美容医療の適切な実施に関する検討会」が開かれました。
美容医療の実態調査の結果と、それに基づく課題および対応案の話し合いでした。以下、主要なポイントを要約します。
【調査の概要と方法】
調査対象:(調査期間 2024年8月~9月)
・医療機関417件(美容医療関連学会会員および医療情報ネットで確認できた施設)
・患者600人(美容医療経験者で何らかの問題を経験した回答者)
・保健所222件(美容医療相談実績のある施設)
【主要な調査結果と課題】
1.医療提供体制における問題点
(1) 医師の経験と専門性
・臨床研修修了直後の医師採用は過去5年間で各年10%未満
・しかし、経験年数や治療件数が十分でない医師が単独で治療にあたるケースが存在
・特に切開を伴わない比較的低侵襲な治療で、半年未満の経験での実施が3割前後
・高侵襲治療でも1年未満の経験での実施が約17%存在
・医師の専門性等に関する要件設定は45.6%の医療機関でのみ実施
(2) スタッフ体制の問題
・カウンセラーを採用する医療機関が43.9%存在
・カウンセラーや受付スタッフによる診察・施術の実態も確認
・看護師・准看護師の従事要件を設けていない医療機関が57.6%
(3) 研修・教育体制
・施術技術に関する研修やルールが不十分
・特に麻酔下施術を行う医師への麻酔・全身管理研修がない医療機関が60%超
・医事法制や消費者保護法制に関する研修も約半数で未実施
2.患者への説明・アフターフォローの課題
(1) 説明不足の実態
・半数近くの患者が十分な説明を得られなかったと回答
・医師以外の職種との会話で実質的に施術が決まるケースが6割以上
・施術同意書への署名時に内容を十分理解していた患者は20%程度
・特に施術のリスクや合併症発生時の対応説明が不十分
(2) アフターフォロー体制の不備
・施術不良対応のマニュアル・研修共に未整備の医療機関が33.8%
・自院で対応不可能な修正・後遺症について連携医療機関がない施設が35.7%
・術後翌日の患者診察ルールがない医療機関が47.7%
3.法令理解の現状
(1) 医療機関側の理解度
・医療法・医師法について詳しい説明が困難な医療機関が約4割
・消費者保護法制については理解度がさらに低く、過半数が説明困難
・特商法の理解不足が書面交付等の法令遵守に影響
(2) 患者側の理解度
・医師法の基本的ルール(無診察治療の禁止等)を知らない患者が約4割
・消費者保護法制で定められた権利の認識も不十分
・ただし、クーリング・オフ制度の認知度は比較的高く72.2%
4.契約関連の問題点
(1) 特定商取引法への対応
・特定継続的役務提供を行う医療機関の約3割が必要書面を適切に交付せず
・法令理解度の低い医療機関ほど書面交付率が低下
・中途解約・クーリング・オフへの対応も法令理解度と相関
(2) 契約トラブルの実態
・施術リスクに関する誇大・虚偽表現による誘引が最多(35.7%)
・施術効果の誇大表現(31.0%)や不適切な割引提示(29.4%)も多発
・契約解除要求の拒否(34.1%)や返金拒否(27.8%)等のトラブルも発生
5.健康被害の状況
(1) 合併症・後遺症の発生状況
・調査対象患者の約40%が合併症または後遺症を経験
・早期の再施術が必要な合併症が18.7%
・長期の後遺症が19.2%
(2) 具体的な健康被害
・熱傷(25.0%)が最多
・重度の形態異常(23.2%)
・皮膚壊死・潰瘍(22.3%)等の重篤な症例も報告
【提示された対応案】
1.ガイドラインの策定と整備
・標準的治療内容・手技の確立
・医師の必要経験・専門性の明確化
・アフターフォロー体制の基準設定
・教育研修制度の標準化
・契約時の遵守事項明確化
2.安全管理措置の報告制度創設
・年1回の定期報告義務付け
・報告内容の公表制度確立
・治療リスクに応じた報告項目の設定
3.患者への情報提供強化
・医療機関の遵守事項・法制度の周知
・リスク情報の適切な提供
・医療広告の監視強化
・適切な医療機関選択のための情報提供
4.実効性確保のための方策
・関係団体による協力体制の構築
・監督機関による指導強化
・医療安全に関する報告制度の確立
これらの調査結果は、美容医療分野における医療の質向上と患者保護のための具体的な制度設計の必要性を示しているといえます。特に、医師の専門性確保、説明責任の徹底、アフターフォロー体制の整備、法令遵守の強化が喫緊の課題として浮き彫りとなっており、規制強化を含めた実効性のある対策の早急な実施が求められているようです。
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