今回は租税特別措置法のお話しです。
先端設備等導入計画の認定を受けた中小企業者等が市区町村から認定を受けた先端等導入計画に基づき一定の設備を新規取得した場合には、その資産に係る固定資産税の課税標準が3年間にわたって1/2からゼロになるよと言う話。
簡単に言うと、生産性向上の資産を取得するために経営革新等支援機関に先端設備等導入の資料を確認してもらって、その確認をもって当該市区町村に確認済み計画書を持参してOKがでてから該当固定資産を購入すると、固定資産が3年間最大ゼロになるよという話です。
もっと簡単に言うと、「最先端の設備を購入する前に税理士等の経営革新等支援機関に相談すれば固定資産税が3年間ゼロになるかもよ。」という話です。
ただ、残念ながら固定資産税の税制支援自体の要件を満たしていても、その前段階の先端設備等導入計画を市区町村から認定を受けられる法人形態に「医療法人や一般社団及び財団、社会福祉法人」等は含まれていないため、結果的に固定資産税の減額を受けることが出来ません。
今回の要件を満たす医療分野に関する法人形態には、個人事業主か薬局等を運営している法人かMS法人位にしか適用がないかもしれません。
※個人事業者は「中小企業者」に該当する法人形態であると手引きに記載されています。
ちなみに中小企業庁に電話した際には、「先端設備等導入計画の策定」は市区町村が主導で行っているため、策定法人に医療法人が入るかどうかは当該市区町村によるとも言っていました。(可能性の話しで難しいニュアンスでしたが。。。)
ですから、ダメもとで確認されることもアリかなと思います。
で、固定資産税と言っても、スケールメリットが小さいなあと思われるかもしれませんが、例えば1億円のMRIを購入した場合には、3年間以下の計算式により固定資産税がゼロになる可能性があります。
(まぁ、対象法人形態がMRIを購入するかどうか?!ですが参考と言う事で記載します。)
<シミュレーション>耐用年数6年 定率法0.333 償却資産税率1.4%として計算
初年度:評価額=取得価額×(1-減価率×1/2)
1億円×(1-0.333×1/2)=83,350千円➀ ➀×1.4%=1,166,900円
2年目:評価額=前年度評価額×(1-減価率)
➀×(1-0.333)=55,594千円➁ ➁×1.4%=778,300円
3年目:評価額=前年度評価額×(1-減価率)
➁×(1-0.333)=37,081千円➂ ➂×1.4%=519,100円
3年合計 1,166,900円+778,300円+519,100円=2,464,300円
※あくまでも筆者のシミュレーションです。ご自身のケースを知りたい場合には申し訳ありませんが顧問税理士等にご相談ください。
どうでしょう、MRIの場合には240万円以上支払う可能性がある固定資産税がゼロになります。
他の固定資産でもそれなりの金額になるようであれば、試すメリットは少しはあるような気がしますね?!
例えば、個人事業主のテナントビルの内装工事などはそれなりの金額になると思うのでメリットはあると思います。
と言う事で、手続きを見ていきましょう。
1.先端設備等導入計画について
上記にも記載したように固定資産税云々の前にまず先端設備等導入計画の認定を受けるための要件があります。これをクリアしてから改めて固定資産税の減額が受けられる要件を満たさなければなりません。要件が2つに分かれているんですね。実は先端設備等導入計画の認定を受けた場合には、別に「革新的データ産業活用計画」の設備投資(5,000万円以上)により法人税の特別償却(30%)か特別控除(3%~5%)を受けられるというのがあります。今回は割愛します。では要件です。
(1)対象者
対象者は中小企業者となり、中小企業等経営強化法第2条第1項に該当する次の法人です。
<中小企業等経営強化法第2条第1項の定義>
業種分類 資本金額又は出資総額 常時使用する従業員の数
製造業その他※ 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円以下 100人以下
ゴム製品製造業 3億円以下 900人以下
ソフトウエア業等 3億円以下 300人以下
旅館業 5千万円以下 200人以下
ちなみに製造業その他は上記、卸売業から旅館業以外の業種が該当しますので、医療保健業も製造業その他に該当します。
つまり、医療保健業の場合「資本金3億円以下で従業員300人以下の法人(個人)」が該当します。
(2)「中小企業者」に該当する法人形態等について
ただし上記記載の通り医療法人や一般社団及び財団、社会福祉法人等は「中小企業者」に該当する法人形態に含まれていないため、適用は受けられません。受けられる法人形態は以下の通りです。
➀ 個人事業主 ➁ 会社(会社法上の会社(有限会社を含む。))➂ 企業組合、協業組合、事業協同組合、事業協同小組合、
協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、商工組合(「工業組合」「商業組合」を含む。)、商工組合連合会(「工業組合連合会」「商業組合連合会」を含む。)、商店街振興組合、商店街振興組合連合会 ➃ 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会、酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会、内航海運組合、内航海運組合連合会、技術研究組合
※➀、➁については、上記表に該当する必要があります。➃については、構成員の一定割合が中小企業であることが必要です。
※➀個人事業主の場合は開業届が提出されていること、法人(➁~➃)の場合は法人設立登記がされていることが必要です。
(3)導入促進基本計画の同意を受けた市町村に所在している中小企業者かどうか
「生産性向上特別措置法」に基づく「導入促進基本計画」を策定することを対象市区町村が同意している事が要件の一つです。この導入基本計画は中小企業庁のホームページで見ることができます。
<中小企業庁>1-2.「導入促進基本計画」の策定見込みの市区町村
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/seisansei/index.html
ちなみに、固定資産の課税標準をどうするかも記載されています。
また、こちらに記載されていない市区町村は直接問い合わせてみてください。ちなみに筆者は1件問い合わせましたがそこは「導入促進基本計画」を作成しない市区町村でした。おそらく記載されていなければ基本計画を作成しない市区町村かと思われます。
(4)先端設備等導入計画の計画書の記載内容
中小企業者が、一定期間内に、労働生産性を一定程度向上させるため、先端設備等を導入する計画を策定し、その内容が所在する市区町村の「導入促進基本計画」に合致する場合で認定を受けるための書類内容等についての説明です。
➀ 一定期間とは
計画認定から3年間~5年間の間
(市区町村が作成する導入促進基本計画で定めた期間)
➁ 労働生産性とは
労働生産性とは、次の算式によって算定します。
(営業利益+人件費+会計上の減価償却費)÷労働投入量(労働者数又は労働者数×1人当たり年間就業時間)
➂ 一定程度向上とは
基準年度比(直近の事業年度末)で労働生産性が年平均3%以上向上する事。
ここで言う基準年度比は対象市区町村ごとになります。
➃先端設備等とは
労働生産性の向上に必要な生産、販売活動等の用に直接供される設備。
ここは、市区町村が作成する導入促進基本計画毎で先端設備等が異なる場合があるため、対象設備であるかどうか各市区町村のホームページ等で確認してください。
<先端設備等導入計画に係る認定申請書 記載例 >
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/seisansei/2018/180524seisanseiPRyoshikiKisairei.pdf
2.税制支援
上記1をクリア出来た場合で固定資産税の減額を受けたい場合には、さらに次の要件を満たさなければいけないことになります。では、見ていきましょう。
(1)概要
先端設備等導入計画の認定(前述)を受けた中小企業者等が適用期間内に、市区町村から認定を受けた「先端設備等導入計画」に基づき、一定の設備を新規取得した場合、新規取得設備に係る固定資産税の課税標準が3年間にわたってゼロ~1/2になる。
(2)中小事業者等とは
・資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
・資本金もしくは出資金を有しない法人で常時使用する従業員が1,000人以下の法人
(3)適用期間とは
「生産性向上特別措置法」の施行日(平成30年6月6日)から平成33年3月31日までの期間
(4)一定の設備とは
<対象設備>
設備の種類 用途又は細目 最低価額 販売開始時期
機械装置 全て 160万円以上 10年以内
工具 測定工具及び検査工具 30万円以上 5年以内
器具備品 全て 30万円以上 6年以内
建物附属設備※ 全て 60万円以上 14年以内
※建物附属設備は償却資産として課税されるものに限る。また、対象設備は市区町村が策定する「導入促進基本計画」によるため対象が異なる可能性があるので、確認をしてください。
医療保健業の場合には太字部分が該当するか否かでしょうかね。最低価額は小さくても例えば建て替えに伴う器具備品の入れ替えや、テナント物件で内装工事が必要な場合には結構メリットがあると思います。
(5)先端設備等の要件とは
上記設備は生産労働制を一定以上向上させる先端設備等でなくてはならず(前述)、税制支援を受ける場合にはさらに以下の要件を満たさなくてはなりません。
➀ 一定期間内に販売(上記、対象設備の販売開始時期)されたモデル
➁ 生産性の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度など)が旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備
上記については、工業会等から証明書を取得する必要があります。
また、以前の税額控除等適用があった、生産性向上設備投資促進税制と違って、証明書取得から税制の適用を受けるまでの手続きが煩雑になっています。
(6)適用の手続きの流れ
先端設備等導入計画と一体となっての手続きとなります。以下の図のようになっています。
メーカー経由で証明書を発行してもらい、経営革新等支援機関から事前確認書を発行してもらい、計画申請を市区町村に行い、認定を受けてから初めて対象資産を取得しなければいけませんので、ある程度の期間は必要になってきます。
市区町村の認定はおおよそ30日程度が目安と中小企業庁は発表していますので、2.3か月は見ておいた方が良いかなと思います。
設備の取得時期については、「先端設備等導入計画」の認定後に取得することが必須となっていますのでご留意ください。
基本は以上になります。例外や細かい事項もありますので手引きも貼っておきますね。
<先端設備等導入計画策定の手引き>
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/seisansei/2018/180625seisanseiSentan.pdf
最後に経営革新等支援機関は経済産業省から認定を受けている機関のことを言います。税理士事務所であることを持ってのみで支援機関を名乗れるわけではありませんので、事前に確認書を発行してもらいたい相手が経営革新等支援機関であるかどうかも確認を取られておいてくださいね。
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