認定医療法人制度➂

医療法

 認定医療法人制度の3回目です。
 平成29年10月1日から新しい持分の定めのない医療法人への移行計画認定制度(新認定医療法人制度)が始まっていますが、これに関しての手引きが出ていない状態が続いていました。
 平成30年5月10日付でやっと、新要件の「運営に関する要件該当の説明書類の記載方法」(別添様式4)が開示されました。

<別添様式4 運営に関する要件該当の説明書類の記載方法>
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000205646.pdf

 今回はこれを踏まえ、留意事項を数回に分けて記載していきます。
 文字数が多すぎると、読む気が失われるのではないかなと。。。決してカウント稼ぎではありません(笑)
 実際、結構な分量で記載方法がアップされていますよねぇ。
 認定する側も人手が限られているから、きちっとしたマニュアルを作って効率的に処理したいのでしょうねと勝手に思っています。

 ちなみに、開示から1か月以上経ってのブログの報告ですが、ご容赦下さい。
 5月申告に追われていてブログ更新はほぼ出来ずにいました。
 この辺りは雇われ人のつらいところですねぇ。。。
 では、気を取り直して早速見ていきましょう。

1.運営に関する要件(概要)
 運営に関する要件は、上記記載の通り、新認定医療法人制度で新たに提出書類となったものです。
 具体的には医療法施行規則附則第57条の2第1号各号に掲げる要件に該当する旨を説明する書類となります。
 記載内容としては順番に、➀運営組織 ➁役員等の選任方法 ➂経理内容 ➃報酬等の支給基準 ➄遊休財産  ➅法令違反 ➆収入金額  ➇自費患者への請求金額  ➈医療に係る経費等  ➉その他書類付表1~3  となっています。

 今回はこのうちの太字部分 ➂経理内容 について以前より細かく記載していきます。

2.経理内容
 経理内容はさらに以下の項目に区分されます。
 ➀施設の利用 ➁財産の運用 ➂金銭の貸付 ➃資産の譲渡 ➄財産の賃借等 ➅給与の支給 ➆債務の保証 ➇公正な方法によらない契約の相手方選定 ➈その他寄附・贈与等

 この項目に社員、理事、監事、使用人その他の医療法人の関係者、株式会社その他営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体に対する特別の利益供与の内容がある場合には記載するとありますが、記載する=特別の利益供与ありなので申請は受け付けてもらえなくなります。

<留意事項>
これらの項目に記載内容が有る場合は、法人の関係者等への特別の利益供与があることから、認定要件を満たしません。特別の利益供与の状況を解消したうえで申請してください。
特別の利益に当たらない取引等については、書類付表2「経理等に関する明細表」に詳述願います。

 また、具体的に特別の利益供与の対象者(医療法人の関係者等)については以前お知らせした通りです。念のため再掲します。

◯ 医療法人の関係者とは、次に掲げる者とする。
 イ 当該医療法人の理事、監事、これらの者に準じ当該医療法人が任意に設置するもの又は使用人
 ロ 出資者(持分の定めのない医療法人に移行した後にあっては、従前の出資者で持分を放棄した者を含む)
 ハ 当該医療法人の社員
 ニ イからハに掲げる者の配偶者及び三親等以内の親族
 ホ イからハに掲げる者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
 へ イからハに掲げる者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの
 ト ホ又はへに掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの
◯ 株式会社その他営利事業を営む者
◯ 特定の個人又は団体の利益を図る活動を行う者とは、次に掲げる者とする。
 イ 株式会社その他の営利事業を営む者に対して寄附その他の特別の利益を与える活動(公益法人等に対して当該公益法人等が行う公益目的の事業又は医学若しくは医術又は公衆衛生に関する事業のために寄附その他の特別の利益を与えるものを除く。)を行う個人又は団体
 ロ 特定の者から継続的に若しくは反復して資産の調度、貸付け若しくは役務の提供を受ける者又は特定の者の行う会員等相互の支援、交流、連絡その他その対象が会員等である活動に参加する者に共通する利益を図る活動を行うことを主たる目的とする団体

 ちなみに最後の ロ.の「特定の者の行う会員等相互の支援、交流、連絡その他その対象が会員等である活動に参加する者に共通する利益を図る活動を行うことを主たる目的とする団体 」とは、医薬の団体、医師会、学会等を指します。

 その関係者等に対して、社会通念上不相当と判断した場合には、特別の利益供与が有りとしなければなりません。具体的には以下に掲げる事例に該当した場合となり、この要件をクリアしなければ申請ができないことになります。

◯ 社員、理事、監事、使用人その他の医療法人の関係者に対して、以下の事例に該当する場合で、社会通念上不相当と認められる場合には、特別の利益供与は「有」とすること。

イ 法人の所有する財産をこれらの者に居住、担保その他の私事に利用させること。
ロ 法人の余裕金をこれらの者の行う事業に運用していること。
ハ 法人の他の従業員に比し有利な条件で、これらの者に金銭の貸付をすること。

 上記イ~ハについては、、医療法人は、不動産賃貸業(社会医療法人を除く)、金融業を行えないので、医療法人から関係者への不動産の貸付け、金銭の貸付けについては、医療法人の業務に付随して行うもの(例:看護師寮、福利厚生の一環として行う役職員への貸付等)しか認められない。審査上、提出書類として、貸付について一定の規定の整備や契約書等を求めることがある。

二 法人の所有する財産をこれらの者に無償又は著しく低い価額の対価で譲渡すること。
ホ これらの者から金銭その他の財産を過大な利息又は賃貸料で借り受けること。
へ これらの者からその所有する財産を過大な対価で譲り受けること、又はこれらの者から当該法人の事業目的の用に供するとは認められない財産を取得すること。

 上記ニ~ヘについては、著しく低い価額、過大な利息又は賃貸料、過大な対価であるかどうかを審査する上で、医療法人が適正な価額であると判断した根拠を求めることがある。根拠として不動産鑑定評価書、近隣類似物件の価額・賃貸借料、路線価、過去の取引実績等の客観的な説明資料を準備すること。

ト これらの者に対して、当該法人の役員等の地位にあることのみ に基づき給与等を支払い、又は当該法人の他の従業員に比し過大な給与等を支払うこと。

 上記トについて、役員としての仕事をしていれば給与を支払っても構わない。ただし、職務内容に対する報酬が妥当であるかどうか説明が求められる。

チ これらの者の債務に関して、保証、弁済、免除又は引受け(当該法人 の設立のための財産の提供に伴う債務の引受けを除く。)をすること。

 上記チについて、この該当医療法人が過去の医療法人設立に際し財産の提供をした場合に、その財産を借入購入している場合などが該当。

リ 契約金額が少額なものを除き、入札等公正な方法によらないで、これらの者が行う物品の販売、工事請負、役務提供、物品の賃貸その他の事業に係る契約の相手方となること。

 上記リについて、関係者及び関係者の関与する法人との取引においては、契約の相手方としてその者を選定した理由を合理的に説明できる必要がある。該当がある場合は審査上、同業他社からの見積もりの徴求結果など説明資料を求めることがある。
株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行う者に対しても、同様に取引の相手としての選定理由を説明できる必要があり、その説明資料を求めることがある。

ヌ 事業の遂行により供与する利益を主として、又は不公正な方法で、これらの者に与えること。

 上記ヌに若干関連する事項として、寄附があります。実は申請書類に寄附・贈与に関する事項がありますが、厚労省側では寄附は災害等支援の場合など特別な事情がある場合が該当すると考えているようです。また、医療法第54条(剰余金の配当禁止)があるため、寄附についてはそれなりに内容を問われることになるようです。是か非かの判断基準は寄附の目的と金額になると言う事でした。

 経理内容については以上です。この要件一つとっても、法人様によっては準備がかなり必要になるのではないでしょうか。
次回も運営に関する要件について記載していきます。







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