認定医療法人制度➀

医療法

今回は認定医療法人制度についてです。
長い内容になりますので、何回かに分けて記載していこうと思います。

まず、前段階として、平成26年10月1日から平成29年9月30日までの期間において「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度」創設されました。
その中の一つとして「持分なし医療法人」への移行促進策として「認定医療法人制度(旧制度)」がありました。
この制度はご存知の方も多いかと思いますが、個人にみなし贈与が課されないだけで相続税法第66条(以下相法66という。)要件を満たさない限り 、法人にみなし贈与税が課される仕組みでした。
この制度が終了後、平成29年10月1日から3年間限定での「認定医療法人制度(新制度 )」が新たに制度化され、相法66の要件を緩和し、この要件を認定後6年間クリアすれば法人に対してもみなし贈与税が課されない事となりました。
今回はこの新制度の説明です。

新認定医療法人制度
 厚生労働大臣認定基準により次の4つの要件を満たす場合に申請した場合、認定医療法人として認定し、持分なし医療法人移行時に相法66➃(みなし贈与課税)の適用はしない。ただし、6年以内に認定取消しになった場合にはみなし贈与税課税がなされます。

(1)要件
 ➀社員総会で議決の上、認定医療法人の申請をしている。
 ➁移行計画の内容が適切である。(様式があり、それに沿って記載すればOK)
 ➂移行計画が3年以内である(医療法附則10の3➃)
 ~ここまでは旧制度と同じ~     
 ④「運営の適正性」要件を満たしている。(H29.10.1以後 医療法附則10の3④四)今回の追加事項

<医療法附則10の3④四・五>
当該申請に係る経過医療法人が、その運営に関し、社員、理事、監事、使用人、その他の当該経過措置医療法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであることその他の厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。
 第1項(認定医療法人移行)の認定は、平成32年9月30日までの間に限り行うことができる。

 具体的には、以下の相法令33➂や医療法に基づき、以下の基準に該当する場合には、贈与税は非課税となります。
ちなみにこの基準は社会医療法人認定要件や特定医療法人承認要件となっており、この要件を緩和したものを認定医療法人制度に取り入れています。
今回はこの社会・特定医療法人の認定等要件となっている相法令33➂と医療法該当箇所を記載し、認定医療法人制度の要件に取り入れられたものを太字で記します。

a.適正性要件<贈与税非課税基準について>
 相続税法施行令第33条➂他 太字要件を満たせば非課税となる。
 (なお、税務当局の個別判断により課税される場合がある。)

➀ 運営組織が適正であること(医療法施行規則第30条の35の2第1項第2号の規定による)
・ 社会保険診療(租税特別措置法第26条第2項に定める給付、医療、介護、助産、サービス)、健診、助産に係る収入金額が全収入金額の80%以上
・ 自費患者に対する請求金額が社会保険診療報酬と同一基準
・ 医業収入が医業費用の150%以内
・ 役員、評議員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を規定

・ 病院、診療所の名称が医療連携体制を担うものとして医療計画に記載(要件から外された。)
※ 医療法第30条の4第2項第4号、第5号:がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患、救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む。)、都道府県知事が特に必要と認める医療
➁ 役員等(社員は含まれない)のうち親族・特殊の関係がある者は1/3以下であること(要件から外された。)
➂ 法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと
➃ 残余財産を国、地方公共団体、公益社団・財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人(持分の定めのないもの) に帰属させること(定款、寄付行為にその旨の定めがあること)※持分なし以降時
➄ 法令に違反する事実、帳簿書類の隠ぺい等の事実その他公益に反する事実がないこと
※ このほか、理事・監事・評議員の定数や選任、理事会・社員総会・評議員会の運営等に関する要件がある。

 
b.医療法人関係者への特別利益供与禁止(上記、適正性要件内➂の具体的内容)

<相続税法施行令33条3項2号>
その医療法人に財産の贈与や遺贈をした者、その法人の設立者、社員や役員等又はこれらの者の親族等に対し、施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任その他財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないこと。

親族等に対し特別の利益供与を行う事については、以下のように記されています。

(法令解釈通達16) 
特別の利益を与えることとは、具体的には、贈与等を受けた法人が、贈与等をした者等又はその親族その他特殊の関係がある者に対して、次に掲げるいずれかの行為をし、又は行為をすると認められる場合

イ 当該法人の所有する財産をこれらの者に居住、担保その他の私事に利用させること。
ロ 当該法人の余裕金をこれらの者の行う事業に運用していること。
ハ 当該法人の他の従業員に比し有利な条件で、これらの者に金銭の貸付をすること。
二 当該法人の所有する財産をこれらの者に無償又は著しく低い価額の対価で譲渡すること。
ホ これらの者から金銭その他の財産を過大な利息又は賃貸料で借り受けること。
へ これらの者からその所有する財産を過大な対価で譲り受けること、又はこれらの者から当該法人の事業目的の用に供するとは認められない財産を取得すること。
ト これらの者に対して、当該法人の役員等の地位にあることのみに基づき給与等を支払い、又は当該法人の他の従業員に比し過大な給与等を支払う こと。
チ これらの者の債務に関して、保証、弁済、免除又は引受け(当該法人の設立のための財産の提供に伴う債務の引受けを除く。)をすること。
リ 契約金額が少額なものを除き、入札等公正な方法によらない で、これらの者が行う物品の販売、工事請負、役務提供、物品の賃貸その他の事業に係る契約の相手方となること。
ヌ 事業の遂行により供与する利益を主として、又は不公正な方法で、これらの者に与えること。

(2)申告要件等
 法人へのみなし贈与非課税規定の適用を受けるためには、一定書類の提出が必要となります。具体的には、➀持分評価の明細書、➁持分放棄時の新定款、➂認定移行計画の写し、➃出資者名簿の写し、➄出資持分の放棄申出書(➁~➄は以前からのの手引きに記載されている。)を提出することとなります。

非課税のための申告要件等<措法70の7の10⑤⑥>
その適用を受けようとする認定医療法人が、贈与税の期限内申告書に、みなし贈与税の非課税規定の適用を受ける旨を記載し、放棄により受けた経済的利益についての明細等財務省令で定める書類の添付がある場合に限り適用される。
 税務署長は、この記載や添付のない贈与税の期限内申告書の提出があった場合で、やむを得ない事情があると認めるときは、その記載をした書類及び一定の書類の提出があった場合に限り、みなし贈与の非課税適用をすることができる。

財務省令で定める添付書類<措規23の12の6②>
1.持分放棄に係る経済的利益に関する明細書(持分評価の明細書)
2.持分放棄の時の認定医療法人の定款の写し等その認定医療法人が厚生労働大臣認定を受けたことを証する書類(持分放棄時の新定款)
3.認定医療法人の認定移行計画の写し(認定移行計画の写し)
4.持分放棄直前の認定医療法人の出資者名簿の写し(出資者名簿の写し)
5.認定医療法人の持分放棄をするための厚生労働大臣が定める書類など贈与者(持分放棄をした個人)による持分放棄があったことを明らかにする書類(出資持分の放棄申出書)

(3)認定取消の場合
 ➀取消
 認定医療法人が持分なしへの移行をした日から起算して6年を経過する日までの間に、認定が取り消された場合には法人にみなし贈与税が課されます。
 取り消された日の翌日から2月以内に適用を受けた年分の贈与税の修正申告書を提出 し、かつ納付すべき税額を納付することになります。期限を守れば延滞税、加算税は課されません。納税者が申告書を出さない場合には「更正」されます。
 ➁厚生労働大臣等の通知
  贈与税の非課税適用を受けている認定医療法人について認定を取り消した場合、厚労大臣は書面により、国税庁長官又は認定医療法人の所轄税務署長に通知がされることとなります。
 ➂税務署長の通知
  税務署長は贈与税の非課税規程の適用を受ける認定医療法人の事務に関して、必要があると認めるときは厚労大臣等に対し、その認定医療法人がみなし贈与税の非課税規定の適用を受ける旨等通知することができるとされています。

6年以内の認定取消しの場合の贈与税課税 <措法70の7の10②>
 認定医療法人(注)が、その非課税とされた贈与税の期限内申告書の提出期限から、認定医療法人が新医療法人(持分なし)への移行をした日から起算して6年を経過する日までの間に認定が取り消された場合にはその認定医療法人を個人とみなして経済的利益にみなし贈与課税する。
 (注)その認定医療法人が合併により消滅した場合には、その合併後存続する医療法人で、合併によりその認定医療法人の権利義務の全てを承継した医療法人とする<措規23の12の6①>。

認定取消しによる修正申告書の提出・納税<措法70の7の10②~④>
 厚生労働大臣認定が取り消された日の翌日から2月以内に、適用を受けた年分の贈与税について修正申告書を提出し、かつ、その期限内に修正申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならない。
なお、2月以内に提出された修正申告書は、国税通則法第20条(修正申告の効力)が適用される場合を除いて、期限内申告書とみなす。
この修正申告書の提出がないときは、納税地の所轄税務署長は、その修正申告書に記載すべきであった贈与税額等について国税通則法第24条(更正)又は第26条(再更正)の規定による更正を行う。

厚生労働大臣等の通知<措法70の7の10⑦、措規23の12の6③>
 厚生労働大臣等は、みなし贈与税の非課税適用を受ける認定医療法人について、認定取り消した場合には、遅滞なく、その旨その他一定の事項を、書面により、国税庁長官又は認定取消しを受けた医療法人の納税地の所轄税務署長に通知しなければならない。
納税地の所轄税務署長等に通知される事項<措規23の12の6③>
・認定取消しを受けた医療法人の名称、主たる事務所の所在地
・認定取消しに係る事実の詳細、その事実の生じた日

税務署長の通知<措法70の7の10⑧、措規23の12の6④>
 税務署長は、贈与税の非課税規定の適用を受ける認定医療法人の事務に関して、厚生労働大臣等の事務処理を適正かつ確実に行うため必要があると認めるときは、厚生労働大臣等に対し、その認定医療法人がみなし贈与税の非課税規定の適用を受ける旨その他一定の事項を通知することができる。
税務署長の通知事項<措規23の12の6④>
・非課税の適用を受ける認定医療法人の名称、主たる事務所の所在地、贈与者の氏名・住所(居所)
・持分放棄に関する非課税適用の贈与税申告書が提出された日など

(4)その他
 新認定医療法人 は1つ要件(4番目の適正性要件)が増えるため、突然、相続が発生した場合に事前準備なしに10か月間で認定を受けることができるのか、かなり難しいのではないかと言われています。
 親族等に事業承継をする場合で、医療法人の資産のほとんどが土地・建物等である場合にはこの制度が必要となってくるが、現預金で相続税の支払いが出来てしまう場合には、持分ありを承継することができるため、認定医療法人制度を活用すべきかどうかは検討の余地があると言えます。

次回は、運営に関する要件について記載していきます。

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