今回は分掌変更の役員退職金についてです。
代表取締役や取締役であった人が、一度退職し退職金受領後、身分を会長や監査役などに(分掌変更)して引き続き在職するケースが株式会社等ではよくあります。
実質的に退職と同様であれば、その時に支出した退職金は税務上も認められるということになっています。
実質的な退職としては従来、形式基準として通達で以下のように定められていました。
<旧法人税法基本通達9-2-23>
(1)常勤役員が非常勤役員になった場合(2)取締役が監査役になった場合
(3)分掌変更後の報酬が激減した場合(概ね50%以上の減少)
この分掌変更の役員退職金についてですが平成18年2月10日京都地裁の判決で、役員の分掌変更等の場合の退職給与(法基通旧9-2-23)における例示内容を形式的には満たしているにも関わらず役員退職金が否認されるという判決が出たことで実務上の流れが一変したようです。
要は実態がどうなのかにより、形式的には満たしていても否認される事例が出てきたわけです。
一方、否認だけではなく更正処分を取り消した判決もあり、形式的には満たしていなくても退職金と認める判決が出てきています。実態の業務が激変した場合が該当します。(H21.3.10長崎地裁判決)
では、そもそもの分掌変更退職金を認める通達の趣旨はというと、経営から引退する上場企業の代表取締役が業界団体の役員就任する場合、会社の役員の肩書が必要だから引き続き取締役として残る場合に分掌変更退職金を損金算入しても構わないということのようです。実際、学校ですがトップを譲り対外的な信頼を維持するための肩書を残した事例では分掌変更退職金が認められています。(H23.4.24京都地裁判決)
結論としましては、対外的な信頼を維持するための等の理由があり、かつ、実態業務が激変であれば趣旨に合致しますので否認されにくくなりますが、それがない場合は実態業務の激変についての説明のみでもできるようにしなければなりません。いずれにしても書類の具備及びそれに即した実態を実行しておく必要があります。
(ただし、当局も更正する場合にはその事由を立証しなくてはなりませんので、むやみに更正はできないと思われます。)
ちなみに現通達は9-2-32になっています。
コメント