基本財産について

医療法

今回は医療法人の基本財産についてです。

資本金とか出資金・拠出金の事と考える方もいらっしゃるでしょう。
いわゆる、税務上の資本金等などの均等割判定になるもの等とは異なります。

三省堂大辞林によると、基本財産とは

1.「基金(3)」に同じ
 →「基金」によると
  (1)ある事業・計画のために積み立てておく資金
  (2)財団法人・特殊法人などの基礎となる資金
  (3)地方公共団体が特定の目的のために維持する不動産・有価証券・預金などの財産。
2.固定資産の中で、特に事業活動の経過とともに価値の減少がみられないもの。土地・建物・特許権など

また、公益法人関連用語集には、

「財団法人は、一定の公益目的のために拠出された財産に法人格を与えたもので、その財産の運用益によって公益事業を行うのを原則とするが、この財団法人存立の基本となる財産を基本財産という。」

と記載されています。

ちなみに、医療法人の基本財産とは何ぞやと調べても明確には出てきませんでした。
どうも、基本財産が記されているのは「病院又は老人保健施設等開設する医療法人の運営管理指導要綱の制定について」(平成2年3月1日健政発第110号)についてが最初のようです。

興味のある方は以下をご覧ください。

「病院又は老人保健施設等開設する医療法人の運営管理指導要綱の制定について」

(最終改正H28.4.20分)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000080759.pdf

これによると財産は「基本財産」と「運用財産」に明確に区分管理しなくてはならず、さらに「基本財産」は

「法人の所有する不動産及び運営基金等重要な資産は基本財産として定款又は寄附行為に記載することが望ましいこと。」「基本財産の処分又は担保の提供については定款又は寄附行為に定められた手続きを経て、適正になされていること。」

とあり、これを解釈すると基本財産とは法人の根幹となる施設等ということができますね。
医療法人を認可する側としては、永続性と安定性の観点から、これらを基本財産として記載してちょうだいね。それから、この基本財産は担保にしてはいけないし勝手に処分しないでね、でもってそれを明確にしてね。という事になるでしょうか。

通常、法人が土地や建物を所有している場合には運営を続ける以上、処分することはないと思いますが、担保に供しているケースはあるのではないでしょうか。
また、病院等の老朽化による建替え移転をする場合には、基本財産に建替え移転前の土地建物を載せていた場合、定款等にその旨記載されているはずですので、定款等の変更を行わなければならなくなり、更に管轄の都道府県に認可をしてもらわなくてはなりません。
財団法人の場合には基本財産と基金が一致しますが、現預金等を多額に基本財産とされている場合で、この現預金等を侵食する恐れがある場合には、事前に管轄の都道府県に相談された方が良いと思います。
(寄附行為の変更のみでは済まない場合も想定されるため。)

では、基本財産は設定しなくてはならないかというとそんなことはありません。上記の通り、「記載することが望ましい。」ため強制力はありません。
実際、医療法等については基本財産の記載はなされていないため法的拘束力はありません。

また、医療法が準用している一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」という。)の第172条第2項には、基本財産に関する記載がありますが、「定款で定めた基本財産があるときは」と定めていますので、これを準用された場合でも定めていなければ強制力はないと思われます。(ちなみに財団と記載されていますが社団にも適用があるようです。)

<一般法人法>
第百七十二条 一般財団法人と評議員、理事、監事及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
2 理事は、一般財団法人の財産のうち一般財団法人の目的である事業を行うために不可欠なものとして定款で定めた基本財産があるときは、定款で定めるところにより、これを維持しなければならず、かつ、これについて一般財団法人の目的である事業を行うことを妨げることとなる処分をしてはならない。

今後、建替え等行う予定の法人様は、他の定款変更を行う必要があるときは合わせて変更されてしまった方が二度手間にならないかと思います。



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