社員総会・理事会・評議員会の開催について

医療法

前回のブログから随分月日が経ってしまいました。日々忙殺されておりました(笑)。やはりコロナ感染症関連で既存のお客様のフォローは今しなくていつするの?!という感じで過ごしておりました。

さて、今回はタイムリーな話題ではなくなってしまいますが総会等の開催についてです。

ご存知の通り、医療法人や社会福祉法人を含む公益法人等は3月決算法人が多くなっています。5月や6月に決算総会が開催される法人様が多い中で、コロナウイルス感染症拡大防止のため、不要不急の外出自粛が求められており、この場合の社員総会等の決議をどうすれば良いかという問い合わせが増えておりました。

 この点をまとめてみました。

1.医療法人の場合

(1)社員総会

ご存知の通り、医療法人の根拠法令は「医療法」になります。この医療法によると社員総会は「書面」又は「代理人」によって決議することが出来ます。

医療法 第四十六条の三の三

5 社員総会に出席しない社員は、書面で、又は代理人によつて議決をすることができる。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

社団医療法人モデル定款 第 22 条

2 社員総会に出席することのできない社員は、あらかじめ通知のあった事項についてのみ書面又は代理人をもって議決権及び選挙権を行使することができる。ただし、代理人は社員でなければならない。

3 代理人は、代理権を証する書面を議長に提出しなければならない。

書面の場合には事前に通知、代理人の場合にはプラス「委任状」が必要となります。

(2)理事会

 理事会については定款で決議の省略の定めがある場合には「書面」決議が認められています。

医療法 第四十六条の七の二

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十一条から第九十八条まで(第九十一条第一項各号及び第九十二条第一項を除く。)の規定は、社団たる医療法人及び財団たる医療法人の理事会について準用する。


一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」とする) 第九十六条

理事会設置一般社団法人は、理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

この部分につきましてはモデル定款であれば記載されています。

注意事項としましては、提案について監事が異議を述べたときはみなし決議が無効になるという点です。

一方、代理人出席の場合には、見解が分かれています。

例えば、西日本のとある県の医療政策課に問い合わせたところ、理事会の委任状出席を認めています。根拠は次のモデル定款と思われます。

社団医療法人モデル定款 第30条

2 理事会の議事についての細則は、理事会で定める。

一方、東京都の場合には理事会決議について「委任状」や「代理人」による議決は認めていません。

東京都福祉保健局 医療法人運営の手引き 第3章 医療法人運営の手続

6 理事会 (3) 理事会

ア 理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数が出席し、その過半数をもって行います。なお、委任状による出席や代理人による議決は認められません。

(3)評議員会

 評議員会については、対象となる医療法人は財団の医療法人若しくは特定医療法人のみが該当しますが、ご参考までに記載いたします。

 先ほどと同じ西日本のとある県に問い合わせた際には、「書面」も「代理人」も認められていないと言われました。医療法に根拠がないからです。

ちなみに一般法人法には、評議員会について決議の省略が条文としてありますが、医療法には準用されていません。(読み替え規定がない。)

一般法人法 第百九十四条

理事が評議員会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき評議員(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の評議員会の決議があったものとみなす。

一方で、他の行政では「原則委任状出席は認めず、細則等別段の定めがある場合には可能」という手引きがありました。

そもそも法律に定めが無いものを特例で認めるということはありえず、腑に落ちなかったので念のため電話で直接担当者に確認をとりました。

結論から言うと、医療法に定めが無く、法律より細則が優先されることは無いので、「書面」も「代理人」も認められないとの事でした。(つまり、手引きが間違えている事を認めておりました。)

このように見ていきましたが理事会だけ異なる(他県でも問い合わせをすると異なる可能性も含め)見解です。なぜこのような現象が起こってしまうかと言いますと、厚生労働省が総会等決議に係る通知を出していないからです。厚労省にも直接その旨問い合わせましたが、通知を出していない以上、医療法人所轄の都道府県に問い合わせをして欲しいとの事でした。

とある県に問い合わせした場合では、法人の規模や状況によっても総会の延期、事業報告書等の届出の延長などの期間が変わると思われるので、一度問い合わせをしてもらってヒアリングしたいとの事でした。また他県に関しても、下記テレビ開催や電話開催を行うことを優先してほしいが、今回のような緊急事態の場合には、書面決議等を行っていただき、コロナが収束した後改めて決議を行うなど柔軟な対応をして欲しいとの話でした。

(4)テレビ開催、(Web開催)について

 今まで記した上記、「書面」「代理人」以外にテレビ開催、(Web開催)、電話開催等があります。こちらは、問い合わせをした各県はもちろんの事、埼玉県はホームページにまで記載しています。

<新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う医療法人の運営に関するお知らせ>(埼玉県HP)

ご指定のページまたはファイルが見つかりませんでした

 要件的には、「出席者が一堂に会するのと同等に、出席者間のコミュニケーションの明確性・即時性・双方向性が確保されているような場合」を満たしていればOKという具合です。医療法等で明文化はされておりませんが、通常開催と同様という位置づけで、現状では各都道府県で一番推奨されております。

(5)議事録と署名又は記名押印

 社員総会、理事会、評議員会共に議事録の記載が必要となります。書面出席や代理人出席の場合にはその旨も議事録に記載する必要があります。

 また、Web会議の場合でもWebで開催した旨、さらに、「Web会議により出席者の音声と映像が即時に他の出席者伝わり、適時的確な意見表明が互いに出来る仕組みになっている事が確認され、議案の審議に入った」旨を記述する事が推奨されています。(公益法人infoFAQより)

 署名又は記名押印については理事会のみ必要で対象者(出席理事全員と監事OR理事長と監事)は定款に記載されている通りに行う。

(6)決議

決議については利害関係を有する者は社員総会、理事会、評議員会について議決に加わることが出来ません。

医療法 第四十六条の三の三

6 社員総会の決議について特別の利害関係を有する社員は、議決に加わることができない。

医療法 第四十六条の七の二 

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十一条から第九十八条まで(第九十一条第一項各号及び第九十二条第一項を除く。)の規定は、社団たる医療法人及び財団たる医療法人の理事会について準用する。


一般法人法 第九十五条

理事会の決議は、議会に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。

2 前項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。

医療法 第四十六条の四の四

4 評議員会の決議について特別の利害関係を有する評議員は、議決に加わることができない。

2.社会福祉法人の場合

(1)評議員会

医療法人とは違い書面決議が可能となっています。

社会福祉法 第四十五条の九

10 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百八十一条から第百八十三条まで及び第百九十二条の規定は評議員会の招集について、同法第百九十四条の規定は評議員会の決議について、同法第百九十五条の規定は評議員会への報告について、それぞれ準用する。この場合において、同法第百八十一条第一項第三号及び第百九十四条第三項第二号中「法務省令」とあるのは、「厚生労働省令」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。  

一般法人法 第百九十四条

理事が評議員会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき評議員(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の評議員会の決議があったものとみなす。

(2)理事会

こちらは医療法人と同じで書面決議が認められています。提案について監事が異議を述べたときはみなし決議が無効になるという点も同じです。

社会福祉法 第四十五条の十四

9 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十四条の規定は理事会の招集について、同法第九十六条の規定は理事会の決議について、同法第九十八条の規定は理事会への報告について、それぞれ準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。


一般法人法 第九十六条 

理事会設置一般社団法人は、理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

ちなみに他の項目(Web会議、議事録、決議)は医療法人と同じです。

3.まとめ

(1)医療法人の場合

 ベストはWeb会議。社員総会は委任状若しくは書面決議可、理事会は定款に記載があれば書面決議可(監事の異議がなければ)。評議員は書面委任状共に不可。いずれも議事録必須。

(2)社会福祉法人の場合

 ベストはWeb会議。評議員会は書面決議可、理事会も定款に記載があれば書面決議可(監事の異議がなければ)。いずれも議事録必須。

いかがでしたでしょうか。今回の内容はコロナ禍の決算においては特に質問が多かったのでまとめてみました。

こちらを踏まえた上で、所轄の都道府県に確認を取られることをお勧めします。

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