消費税増税に伴う経過措置

税制

 今更ながらですが、平成31年10月1日から消費税率が10%となる予定です。一個人としてはさらなる延期をしてもらいたいところですが、今のところ10%になるのは既定路線ですよね。ということで、以前5%から8%に消費税増税された際の経過措置について、おさらいを兼ねて書いていきます。(ブログ執筆現在、経過措置適用期日まであと3週間弱しかありませんが、とりあえずの注意喚起と言う事でご了承ください。)

 前提として消費税は契約日ではなく、資産の譲渡等が行われた日が基準日になりますね。いわゆる引渡し基準と言うものです。例えば今回の増税では2019年9月30日に契約をして、翌10月1日に品物を引き渡した場合には10%の消費税が課されると言う事です。

 今回の増税に伴い、10%への税率引き上げ後においても一定要件を満たせば旧税率の8%が適用される取引があります。契約から引き渡しまで時間がかかるものや、資産の貸付などですね。医療や介護関係で当てはまる主なものは請負工事(建物の新築や建替え等)や建物賃貸借、リース契約、有料老人ホームの一時金などですね。これらの契約を2019年3月31日までに行った場合には、要件を満たせば旧税率の8%のままで良いですよという経過措置の内容です。

目次

1.請負工事等

 2019年3月31日までの間に締結した工事(製造を含みます。)に係る請負契約(一定の要件に該当する測量、設計及びソフトウエアの開発等に係る請負契約を含みます。)に基づき、2019年10月1日以後に課税資産の譲渡等を行う場合における、その課税資産の譲渡等について経過措置があります。

イメージはこんな感じです。

 ちなみに契約を2019年3月31日までにした場合には工事着手が2019年10月1日以後でも経過措置の8%の対象になります。

(1)対象取引

 経過措置の対象となる取引は以下の取引で、目的物の引渡しが一括して行われ、内容について買主の注文に応じているものが対象になります。目的物の引渡し一括については、一部完成部分を引渡して収入計上する場合にも可能です。

➀ 工事の請負に係る契約

➁ 製造の請負に係る契約

➂ これらに類する契約(例えば、委任その他請負に係る契約等)

 医療や介護に係る部分については➀の工事請負契約が主ですかね。➀は日本標準産業分類の大分類、建設業に分類されるものを指しますので、建物の新築や改築などが該当しますね。

(2)請負金額の変更について

 請負工事の場合、工事の進行に応じて見積金額が増減することがあります。例えば、契約後、工事内容を縮小したり、また復活したりするケースなどです。(復活などあまりないとは思いますが。)この場合、最初の契約内容の請負金額を超えない場合には経過措置の対象となります。

 ただし、追加工事や資材の値上がりを理由とする金額の増額変更の場合は経過措置の対象外となります。

 また、当初契約書に金額の記載がなく、指定日(2019年31年4月1日)以降に金額の決定を行った場合においても経過措置の適用外です。

2.有料老人ホーム

 2019年3月31日までの間に締結した有料老人ホームに係る終身入居契約(入居期間中の介護料金が入居一時金として支払われるなどの一定の要件を満たすものに限られます。)に基づき、2019年10月1日前から同日以後引き続き介護に係る役務の提供を行っている場合における、2019年10月1日以後に行われるその入居一時金に対応する役務の提供についても経過措置が受けられます。

こちらもイメージはこんな感じです。

(1)適用対象となる契約の範囲

 以下の➀~➂を全て満たす契約が経過措置の対象です

➀ 老人福祉法第29条第1項に規定する有料老人ホームに係る終身入居契約である。

➁ 入居期間中の介護に係る役務の提供の対価が、入居の際に一時金として支払われるものであること。(消費税法別表第1第7号に掲げる非課税取引(いわゆる介護保険適用のサービスの事)を除く。)

➂ 一時金につき事業者が事情の変更その他の理由によりその額の変更を求めることができる旨の定めがないもの。

(2)対価の額が変更された場合

 指定日(2019年4月1日)以降に一時金の額の変更が行われた場合には、経過措置が適用外になります。一時金の額の変更には、増額のみならず、減額も含まれます。

3.資産の貸付け

 2019年年3月31日までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、2019年10月1日前から同日以後引き続き貸付けを行っている場合(一定の要件に該当するものに限ります。)における、2019年10月1日以後に行う当該資産の貸付けについても経過措置の適用があります。

こちらのイメージはこんな感じです。

(1)対象取引

 経過措置の対象となる取引はビル等の賃貸借契約リース取引で以下の要件を満たしているものになります。

➀ 当該契約に係る資産の貸付期間及びその期間中の対価の額が定められている事。

➁ 事業者が事業の変更その他の理由により当該対価の額の変更を求めることが出来る旨の定めがないこと。

➂ 契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることが出来る旨の定めがないこと並びに当該貸付に係る資産の取得に要した費用の額及び附随費用の額(利子又は保険料の額を含む。)の合計額のうちに当該契約期間中に支払われる当該資産の貸付の対価の額の合計額の占める割合が100分の90以上であるようにその契約において定められていること。(要は中途解約無効と契約期間中に購入価額合計額の9割以上を払う契約をしているリースの事を指しています。)

 ➀の補足としては貸付期間中の短期前払費用処理については可能です。新税率の適用期間に該当する場合には、新税率については原則として仮払金処理になります。特例として新税率適用時に8%から10%の洗替処理も可能です。

 ➁の補足ですが、この対価の額の変更については「税抜」で考えるため、消費税額の変更は含まれません。

(2)対価の額が変更された場合

 指定日(2019年4月1日)以後に対価の額の変更が行われた場合には、経過措置は適用外となります。

 なお、契約書に「消費税率の改正があったときは改正後の税率による」旨の定めがあった場合でも改定税率を適用しない場合には、契約期間内は旧税率での適用が続きます。

 また、賃貸人が修繕義務を履行しない等による「正当な理由」により対価を変更した場合には経過措置の対象となります。ちなみに、物価変動、租税公課等の増減を理由とする対価の額の変更は、「正当な理由」に該当しません。

 いかがでしたでしょうか。5%や8%増税の際の経過措置と同じですが、とりあえずざっくりでも頭の中に入れておきたいものですね。願わくば増税延期になる事を求めますが。

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