中小企業向け所得拡大促進税制について

税制

めちゃめちゃお久しぶりの更新です。

気が付いたら今年はまだ一度も更新していなかったという体たらくでした。

しかもWordPressのバージョンが変わって、ブログがとっても書きづらいです(笑)

まぁ、めげずに更新していきたいと思います。

さて、今回は「中小企業向け所得拡大促進税制」についてです。

平成30年度税制改正でリニューアルした所得拡大促進税制の内容です。     

大綱当時の内容はこちらです。

<平成30年度税制改正➁(中小企業の所得拡大促進税制の改組)>http://youtaxsaver.wp-x.jp/2018/01/21/%e5%b9%b3%e6%88%9030%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e3%80%80%e7%a8%8e%e5%88%b6%e6%94%b9%e6%ad%a3%e2%9e%81%ef%bc%88%e4%b8%ad%e5%b0%8f%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%81%ae%e6%89%80%e5%be%97%e6%8b%a1%e5%a4%a7%e4%bf%83%e9%80%b2/

 で、この新所得拡大促進税制は平成30年4月1日開始事業年度から平成33年3月31日開始事業年度までという期間で開始されています。(平成33年なんて無いよと言うツッコミは止めて下さい。)

 条文番号で言うと「措置法第42条の12の5」関係になりますが、内容を大まかに言うと、

➀ 通常の要件を満たした場合・・・前年度からの給与総額の増加額の15%を税額控除

② 上乗せ要件を満たした場合・・・前年度からの給与総額の増加額の25%を税額控除

※ただし、税額控除額は法人税額の20%が限度です。

では以下に細かい要件を記載していきます。

目次

1.通常の場合

(1)税額控除額

 雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した15%を税額控除できる。

※1 雇用者給与等支給額とは、役員及び役員の特殊関係者以外の国内雇用者で賃金台帳に記載されている者(以下「国内雇用者」という)の適用年度の給与等の支給額を言います。

※2 比較雇用者給与等支給額とは、国内雇用者の前事業年度の給与等の支給額を言います。

 注意点としては、役員給与のうち使用人兼務役員の使用人分給与も計算対象外となります。また、実質的に法人の経営に従事しているものも役員とみなします。

 賃金台帳に記載されている者には、パート、アルバイト、日雇い労働者も含みます。(医療従事者で日雇いがいるのかという指摘はご容赦ください。)

 給与等支給額なので給与所得に該当するものが対象です。したがって退職金は含まれません。

(2)要件

 継続雇用者に支払った給与等の総額について、適用年度において前事業年度と比べて1.5%以上増加していること。

※継続雇用者とは、以下の要件をすべて満たすものをいいます。

➀ 前事業年度及び適用年度の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者。

② 前事業年度及び適用年度の全ての期間において雇用保険の一般被保険者。

➂ 前事業年度及び適用年度に一部でも高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象になっていない。

以下は継続雇用者に該当しない者の例です。

・対象年度(前期・当期)において入職した者、退職した者。

・対象年度(前期・当期)において産休・育休等により休職している者が、その間、給与等の支給がない月がある者(「産休・育休手当」等は給与に含まれる。)。

・対象年度(前期・当期)において一部の期間でもパート・アルバイト・時短勤務等により、雇用保険の一般被保険者でなかった者。

・対象期間(前期・当期)において、高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象になった者。


2.上乗せ要件

(1)税額控除額

 以下の適用要件を満たした場合には、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した25%を税額控除できる。

※雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額は、上記、通常の場合と同じ。

(2)要件

 継続雇用者に支払った給与等の総額について、適用年度において前事業年度と比べて2.5%以上増加しており、さらに以下のいずれかを満たすこと。

➀ 教育訓練費の額が、適用年度において前事業年度と比べて10%以上増加していること。

② 適用年度終了の日までに中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされていること。

➁の経営力向上計画の認定を受ける期間については大体通常1か月程度が目安のようです。時期によっては45日程度かかることもあるようです。

(3)教育訓練費増加要件

1.教育訓練の対象者・・・国内雇用者

(役員、使用人兼務役員、特殊関係者、前項の生計一親族、入社予定者を除く)。

2.対象となる教育訓練費の範囲

➀ 法人が教育訓練等を自ら行う場合の費用(外部講師謝金等、外部施設使用料等)

 ・国内雇用者に対して外部講師等を招聘し、講義・指導を行う費用

 ・外部講師等に対して支払う報酬、旅費(派遣先法人への支払い含む)

 ・施設、備品、コンテンツ等の賃借又は使用に係る費用

 ・教育訓練に関する計画等について、外部の専門家に委託する費用

② 他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用(研修委託費)

 ・国内雇用者の職務に必要な技術・知識の習得(外部教育機関・商工会等)

 ・教育訓練等のために他者に支払う費用(講師料、施設使用の委託費等)

➂ 他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用(外部研修参加費)

 ・研修講座、講習会、研修セミナー。技術指導等に参加させる費用

 ・法人が直接または国内雇用者を通じて、他の者に支払う研修参加費用(国内雇用者が一部負担するときはその部分は除く。)

 ・授業料(通信講座含み、学資金等の内給与とされるものを除く)、受験手数料(教育訓練の一環としての資格、検定の場合対象)

3.対象とならない費用

・使用人又は役員に支払う教育訓練費中の人件費、報奨金等

・教育訓練等に関連する旅費、交通費、食費、宿泊費

・福利厚生目的など教育訓練以外を目的として実施する場合の費用

・法人が所有する施設等の使用に要する費用(光熱費・維持管理費等)

・法人の施設等の取得費及び減価償却費

・教材等の購入・制作に要する費用(教材となるソフトウエアや開発費を含む。)

・教育訓練の直接費用でない大学等への寄附金、保険料等

(4)経営力向上要件

1.流れ

➀ 適用年度終了日までに経営力向上計画の認定を受ける。(所轄の厚生局)

② 適用年度終了後、➀の経営力向上計画についての報告書を提出。

➂ 税務申告書に、「認定後の経営力向上計画の写し」、「認定書の写し」、②の報告書を添付

2.提出書類

➀ 認定申請書(経営力向上計画書類は2枚程度)※計画期間は3年から5年

② 報告書はWEBフォームの報告システムを利用。

<経営力向上計画申請プラットフォーム>

経営力向上計画申請プラットフォーム
所得拡大促進税制の上乗せ措置の適用を受けるために必要な「経営力向上が行われたことに関する報告書(経営力向上報告書)」を作成できます。

3.上乗せ措置が受けられる指標

➀ 基本方針により認定を受けている場合・・・労働生産性

② 事業分野別指針により認定を受けている場合・・・下記(ア)(イ)いずれか

(ア)労働生産性、売上高経常利益率、付加価値額

(イ)分野別指標

 医療分野・・・職員の離職率、勤続年数、定着率、ICTの活用等によるコスト削減

 介護分野・・・介護職員の勤続年数、離職率、入職率

4.実績値欄記入内容

 ➀ 基本方針認定の場合(労働生産性の場合)

(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量※

※(労働者数又は労働者数×1人当たり年間就業時間)

② 事業別分野別指針認定の場合

全ての事業分野

⓵労働生産性・・・上記、労働生産性記入内容に同じ

⓶売上高経常利益率・・・経常利益÷売上高

※経常利益の算出について、営業利益から資金調達に係る営業外費用(支払利息等)を控除し、本業と関連性の低い営業外収益(有価証券売却益等)を含まない。

⓷付加価値額・・・営業利益+人件費+減価償却費

医療分野

⓵職員の離職率・・・離職者数÷従業員数

⓶勤続年数・・・全職員の勤続年数の計÷職員数

⓷定着率・・・1-職員の離職率

⓸ICTの活用等によるコストの削減・・・作業を行う職種の平均時間給単価×該当作業に要する時間

※物件費はその費用を計上して合算。

介護分野

⓵介護職員の勤続年数・・・全職員の勤続年数の計÷職員数

⓶職員の離職率・・・離職者数÷従業員数(医療分野と同じ)

⓷入職率・・・入職者数÷全職員数×100

注意点としては認定時の現状値と実績値を比較して、適用年度の方が増加していなければ上乗せ措置は利用できないということです。(離職率、ICTの活用等によるコスト削減は減少必須です。)

3.地方税

中小企業はこの所得拡大促進税制について、法人住民税・法人税割の課税標準額の計算上、税額控除が適用できる。(地方税法附則第8条)

つまり、法人県民税と法人市民税の税額の基となる課税標準額は、この所得拡大促進税制適用後の法人税額となる。(新設事項)

いかがでしたでしょうか。上乗せ要件は事前の準備が少し必要ですが、通常の要件は要件を満たしているかどうかの確認をすることにより、ほぼ書類が仕上がるようになっています。また、租税特別措置法の税額控除については更正の請求が出来ませんので、確認を怠らずに準備しておきたいものですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました