今回は医療法人の理事長について書きたいと思います。
皆さんは医療法人の理事長にはどんな方がなるとお考えですか?!
一般的にはやはり「医師」とお考えになる方が多いのではないでしょうか。
概ね正解です。原則、医療法人の理事長は医師がなることになっています。
一方、原則があれば例外もあると言う事で、例外については都道府県知事の認可を受けた場合には医師又は歯科医師以外の者が理事長になることができます。
<医療法>理事長の選出
第四十六条の六 医療法人(次項に規定する医療法人を除く。)の理事のうち一人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。ただし、都道府県知事の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。~以下略~
では、この例外規定について、どのような者がなることが出来、若しくはどのようなケースでなることが出来るのでしょうか?!
こちらについては、大きく分けて三つあります。
大まかに言うと、(1)医療法人の形態、(2)人選及び医療法人の運営形態が適正である場合、(3)将来において人的資源が確保できる場合
ですね。
では、見ていきましょう。
(1)医療法人の形態
いわゆる医療法人の中でも、「公的な色合いが強い医療法人」が該当します。
具体的には特定医療法人、社会医療法人、地域医療支援病院を有する医療法人、病院機能評価認定を受けた医療機関を有する医療法人などです。
(2)人選及び医療法人の運営形態が適正である場合
こちらは、医療法人の理事長となる者の経歴、理事会構成などが適正であり、かつ安定的な法人運営を行うことができると都道府県知事が認めた医療法人です。
具体的には、過去5年間にわたって運営が適正及び経営が安定している場合、理事長候補者が理事として3年以上在籍していて経営が安定している場合、医師又は歯科医師が理事全体の3分の2以上で、親族関係者が理事全体の3分の1以下であり、過去2年間運営が適正で経営が安定している場合などがあげられます。
(1)、(2)については、暴力団の構成員や関係者が就任しない事、就任する恐れがないことを確認することになっています。
また、(2)については都道府県知事は認可する際の審査に関し、あらかじめその都道府県の医療審議会の意見を聞くこととされています。
(3)将来において人的資源が確保できる場合
こちらは、主に理事長が急逝、若しくは重度の障害等によって医療法人の業務を遂行することができなくなった場合などで、その理事長のご子息が後を継ぐために医学部等に在学している、若しくは卒業したが臨床研修が終わるまで理事長職に従事できない者の代わりに、医師や歯科医師でない配偶者等がその間、理事長に就任するというものです。
(3)のケースはそこそこ実例がありますね。逆に言うと一人医療法人の場合には、このケースで認められる以外はあまり無い様に見受けられます。
また、ご子息が医師になることが叶わず、解散を余儀なくされた法人様も存じ上げております。
上記については、「医療法人運営管理指導要綱」に記載されています。
<医療法人運営管理指導要綱>~抜粋~
・医師、歯科医師でない理事のうちから選任することができる場合は以下のとおりである。
➀ 理事長が死亡し、又は重度の傷病により理事長の職務を継続することが不可能となった際に、その子女が医科又は歯科大
学(医学部又は歯学部)在学中か、又は卒業後、臨床研修その他の研修を終えるまでの間、医師又は歯科医師でない配偶者等
が理事長に就任しようとする場合
➁ 次に掲げるいずれかに該当する医療法人
イ 特定医療法人又は社会医療法人
ロ 地域医療支援病院を経営している医療法人
ハ 公益財団法人日本医療機能評価機構が行う病院機能評価による認定を受けた医療機関を経営している医療法人
➂ 候補者の経歴、理事会構成等を総合的に勘案し、適正かつ安定的な法人運営を損なうおそれがないと都道府県知事が認めた
医療法人
その他、医師、歯科医師以外の者を理事長とする認可の資料は以下に添付しておきます。
<医師、歯科医師以外の者を理事長とする認可>
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/tetuduki/rijityouyouken.html
申請については、理事長になる者である理事の住所、氏名、医師又は歯科医師でない理事から理事長を選出する理由を記載した申請書を提出しなければなりません。
<医療法施行規則>
(医師又は歯科医師でない理事のうちから理事長を選出する場合の認可の申請)
第三十一条の五の三 法第四十六条の六第一項ただし書の規定による認可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
一 当該理事の住所及び氏名
二 理事長を医師又は歯科医師でない理事のうちから選出する理由
いかがでしたでしょうか。医師又は歯科医師以外でも理事長に就任できるケースを紹介いたしました。
実務的には医療は医師をトップとした資格社会と言われておりますので、よほどのカリスマ性がない限り非医師の理事長運営はなかなか難しい所ではないでしょうか。
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