関係事業者との取引状況に関する報告様式について、以前ご報告させていただきました。
<関係事業者との取引に関する報告書>
http://youtaxsaver.wp-x.jp/2018/02/20/
その後、平成30年3月9日の厚生労働省「平成29年度全国医政関係主管課長会議」の資料において、以下のような文言が記されていました。
4.医療法人制度について
(医療法人制度の見直し)
○ 医療法人制度の見直しについては、外部監査等の医療法人の透明性の確保及びガバナンスの強化、医療法人の分割等について、平成27年9月に医療法を改正したところ。
主なポイントとしては、以下のとおりである。
~略~
② 医療法人の役員と特殊の関係がある事業者との取引の状況について、都道府県知事に報告する。○ この改正医療法の施行スケジュールとしては、ガバナンスの強化、医療法人の分割等について、平成28年9月に施行されたところである。
外部監査の義務付け、関係事業者との取引状況の報告について、平成28年4月に省令及び通知を改正し、平成29年4月2日以降に始まる会計年度より適用された。3月末を決算期としている医療法人が多いところ、大部分の医療法人は平成30年4月から外部監査及び関係事業者との取引状況報告に係る制度が適用されるため、制度の実施にあたり遺漏なきよう所管の医療法人に指導をお願いしたい。
ここまでは、以前お話しした通りの内容であり、「事業報告書等」に該当する事項を「関係事業者との取引状況に関する報告様式」に記載して提出するというお話でした。
しかし、事業報告書等の届出に関する事項について次のように記載がされておりました。
(事業報告書等の届出)
〇 医療法人は、医療法第52条の規定により、毎事業年度、都道府県に対する事業報告書等の届出が義務付けられている。提出された事業報告書等の確認は、適正に法人運営がされていることの最低限の確認であるので、届出漏れがないよう厳正な指導をお願いする。この点については、平成26年6月24日に総務省の行政評価・監視において勧告された内容に基づき、当方からも通知しているので、しっかりと対応していただきたい。
また、平成29年4月2日以降に始まる会計年度からは、関係事業者との取引状況の報告が求められることとなった。医療法人の利益を事実上分配する等の関係事業者との不適切な取引が確認された場合は、厳正な指導をお願いする。
利益を事実上分配する等の関係事業者との不適切な取引とあります。
医療法において利益の外部流失は認めないと言うことは医療法第54条において明文化されております。
医療法 第五十四条 医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。
ただ具体的に配当とは何を指すのかは施行令や施行規則に記載されてはおりません。
実務上はいわゆる株式会社の配当という概念ではなく、医療法人の留保利益を外部に流出させる行為が、この第54条に抵触する(つまり医療法違反に該当する)と捉えられています。
このことを前提として指導されそうなものとして、次のようなものが想定できるかなと考えました。
➀ 関係事業者(法人)との取引金額が過大
➁ 関係事業者の役員に対する過大報酬
➂ 関係事業者(法人)の株主に対する配当
➀は医療法人と直接取引を行う行為であるため、その金額の妥当性は問われるのでなないかという理由からです。
➁は医療法人との取引によりMS法人が利益を生み、そのことで関係事業者役員に過大に報酬が支給される可能性がある。
➂も医療法人との取引によりMS法人が利益を生み、そのことで株主に配当が支払われる可能性がある。
➁と➂は間接的にではあるが、医療法人の留保利益を還元させてしまっている行為ではないかと考えることもできるためです。
この想定の下、厚生労働省医政局医療経営支援課に確認をしたところ、
➀の関係事業者(法人)との取引金額については確認する事項となるということ。
それ以外の➁や➂については医療法人側の確認事項とはならないと言う事でした。
つまり、医療法人とMS法人との取引にのみ着目しているということです。
配当について株式会社には制約はありませんし、役員報酬についてもMS法人については通常の会社が出しているのであれば、MS法人であるからどうということではないようです。
ただし、医療法人の役員がMS法人の役員兼務については望ましくないとされておりますので注意が必要です。
各々の法人から報酬を受けていることは、尚更望ましくありません。
医療法人運営管理指導要綱
<役員の適格性>~中略~
医療法人と関係のある特定の営利法人の役員が理事長に就任したり、役員として参画していることは、非営利性という観点から適当でないこと。
話を元に戻します。結論としては、関係事業者に関する取引については、あくまでも医療法人が資金流失(配当)となるべきような行為があった場合について不適切であると指摘されることになり、その確認については関係事業者との取引が適正になされているか否か検証し、これを判断するということのようです。
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