病院内保育所についての税務

社会医療法人

今回は病院内の保育所の税務についてです。
保育所不足が叫ばれて久しいですが、医療法人の中には看護師さん等の人員確保のために自前で保育施設を所有したり、新たに作ろうという動きもあります。

保育所といっても「認可」と「認可外」があり、「認可保育所」の消費税は非課税、法人税は経営主体により課税・非課税が分かれています。
(例えば、社会福祉法人や学校法人等は非課税)
一方、「認可外保育施設」は原則課税なのですが、状況によって税務上の課税関係が変わったりします。
今回はこのことについて取り上げてみます。

上記に記載した通り、保育施設には「認可保育所」と「認可外保育施設」に分類されます。

「認可保育所」とは、児童福祉法第35条第3項に基づき区市町村が設置を届け出た、または同条第4項に基づき、民間事業者等が都道府県知事の認可を受け設置した児童福祉施設です。
「認可外保育施設」とは、「認可保育所」以外の子供を預かる施設(保育者の自宅で行うもの、少人数のものも含む。)の総称です。

認可保育所は、保護者が仕事などで世話をする人がいない児童の福祉の向上を目的とした、区市町村の保育計画などに基づき計画的に設置される施設ですが、認可外保育施設は、設置者が自由に設置できます。
認可外保育施設に該当するものは概ね以下のものが挙げられます。

<認可外保育施設に該当するもの>
ベビーホテル、駅型保育所、駅前保育所等のいわゆる無認可保育所の他、その他の法令や通知で規定された事業内保育所、病院内保育所、へき地保育所(市町村が山間部等に設置)、季節保育所等。

消費税法上は認可外の保育所は原則課税となりますが、「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書」がある場合には、認可保育所と同様に以下のものが非課税となります。

【非課税】
(1) 保育料(延長保育、一時保育、病後児保育に係るものを含みます。)
(2) 保育を受けるために必要な予約料、年会費、入園料(入会金・登録料)、送迎料
 また、給食費、おやつ代、施設に備え付ける教材を購入するために徴収する教材費、傷害・賠償保険料の負担金、施設費(暖房費、光熱水費)等のように通常保育料として領収される料金等については、これらが保育料とは別の名目で領収される場合であっても、保育に必要不可欠なものである限りにおいては、(1)(2)と同様に非課税となります。

一方、例えば、認可外保育施設及び幼稚園併設型認可外保育施設において施設利用者に対して販売する教材等の販売代金のほか次のような料金等を対価とする資産の譲渡等は、乳児又は幼児を保育する業務として行われるものに該当しないので、課税となります。

(1) 施設利用者の選択により付加的にサービスを受けるためのクリーニング代、オムツサービス代、スイミングスクール等の習い事の講習料等
(2) バザー収入

認可外保育施設の利用料(国税庁HP)

認可外保育施設の利用料|国税庁

余談ですが、平成26年度税制改正により平成27年4月1日から要件を満たす保育施設は新たに消費税が非課税とされている項目があります。

子ども・子育て支援新制度に係る税制上の取扱いについて(通知)

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/s-zeisei2-t.pdf

例えば、給食費やスクールバス代なども非課税となっています。

<上記取り扱い抜粋>
子ども・子育て支援法に基づく確認を受ける幼稚園における食事の提供に要する費用や当該幼稚園に通う際に提供される便宜に要する費用等の特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準(平成26 年内閣府令第39 号。以下「運営基準」という。)第13 条第4 項に規定するものについては、施設型給付費等の支給に係る事業として行われる資産の譲渡等として非課税となること。

特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準
(平成二十六年内閣府令第三十九号)
第十三条(抜粋)
4 特定教育・保育施設は、前三項の支払を受ける額のほか、特定教育・保育において提供される便宜に要する費用のうち、次の各号に掲げる費用の額の支払を支給認定保護者から受けることができる。
一 日用品、文房具その他の特定教育・保育に必要な物品の購入に要する費用
二 特定教育・保育等に係る行事への参加に要する費用
三 食事の提供に要する費用(法第十九条第一項第三号に掲げる小学校就学前子どもに対する食事の提供に要する費用を除き、同項第二号に掲げる小学校就学前子どもについては主食の提供に係る費用に限る。)
四 特定教育・保育施設に通う際に提供される便宜に要する費用
五 前四号に掲げるもののほか、特定教育・保育において提供される便宜に要する費用のうち、特定教育・保育施設の利用において通常必要とされるものに係る費用であって、支給認定保護者に負担させることが適当と認められるもの

話がそれましたが、法人税の場合には社会福祉法人、社会医療法人、学校法人等の公益法人等に該当する場合、法人税法上も認可外の保育所は収益事業に該当し課税となりますが、「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書」がある場合には収益事業に該当しないものとして取り扱って良い事となっています。

<一定の水準を満たすものとして地方公共団体の証明を受けた認可外保育施設において公益法人等が行う育児サービス事業に係る収益事業の判定>

一定の水準を満たすものとして地方公共団体の証明を受けた認可外保育施設において公益法人等が行う育児サービス事業に係る収益事業の判定|国税庁

では、病院内保育所若しくは事業所内保育所に監督基準を満たす旨の証明書を発行してもらうにはどうすれば良いのか。
以前某自治体の(民間保育援助担当)にお尋ねしました。
そこの地域で病院内保育所等で監督基準を満たすためには、通常の基準の他、「6人以上の子供を預かること、それ以外に事業所外の子供を預かることも必要」との事でした。実際問題としては事業所内保育所で監督基準を満たした証明書を出しているケースはこの自治体ではほぼないと言うことでした。

「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書の交付について」の一部改正について(通知)

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/h290303/shidou_koufu.pdf

なかなかクリアするにはハードルが高いようですが、周知されていない可能性も否めません。
一方、医療法人の保育所運営は人員確保のための設営が多いと思います。保育士さんの委託などで運営自体は赤字になるケースがほとんどかと思いますので法人税については公益法人等の場合、収益事業のままの方が都合が良いという面もあるかもしれません。
(収益事業の趣旨的にはどうなのかという面は否めませんが...)
消費税についても原則課税の場合には同様かもしれません。
このあたりの判断は、法人様の運営状況、また地域性によっても異なると思われます。

実務的には医療法人の場合、この証明書は使い勝手は良くないと思いますので、情報として頭の片隅に残しておく程度の理解で良いと思います。







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