医療法人の遊休資産について

医療法

今回は医療法人の遊休資産についてです。

病院の建替えや拡張に伴い、近隣等に土地建物の取得をしているが、実際の建替えや拡張は具体的な目途が立っていない、若しくは建替え予定地の一部取得しか出来ていない場合などの遊休資産の取り扱いです。
以前は上記遊休資産を賃貸の用に供することは認められていませんでした。
なぜなら、この賃貸の用に供する行為は医療法上「収益業務」に該当することになるからです。

医療法人は本来業務、附帯業務、付随業務を行うことができ、収益業務は社会医療法人以外は行うことができません。
本来業務とは病院、診療所、介護保険施設、介護療養院(新設予定)を指します。
附帯業務は定款または寄附行為に定めることにより、本来業務に支障をきたさない範囲において「医療法第42条各号」に掲げる各業務の全部または一部を行うことができます。
ただし、本来業務を行わず、附帯業務のみを行うことはできません。
ちなみに、医療法第42条は以下の通りです。

<医療法>
第四十二条 医療法人は、その開設する病院、診療所又は介護老人保健施設(当該医療法人が地方自治法第二百四十四条の二第三項に規定する指定管理者として管理する公の施設である病院、診療所又は介護老人保健施設(以下「指定管理者として管理する病院等」という。)を含む。)の業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、次に掲げる業務の全部又は一部を行うことができる。
一 医療関係者の養成又は再教育
二 医学又は歯学に関する研究所の設置
三 第三十九条第一項に規定する診療所以外の診療所の開設
四 疾病予防のために有酸素運動(継続的に酸素を摂取して全身持久力に関する生理機能の維持又は回復のために行う身体の運動をいう。次号において同じ。)を行わせる施設であつて、診療所が附置され、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置
五 疾病予防のために温泉を利用させる施設であつて、有酸素運動を行う場所を有し、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置
六 前各号に掲げるもののほか、保健衛生に関する業務
七 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第二項及び第三項に掲げる事業のうち厚生労働大臣が定めるものの実施
八 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十九条第一項に規定する有料老人ホームの設置

収益業務は社会医療法人のみ行うことができますが定款又は寄附行為に定めなければならず、本来業務に支障が出ないことを前提とし、その本来業務の経営に充てることを目的として以下の業務を行うことが出来ます。

<行うことが出来る収益業務の範囲>(日本標準産業分類に定める以下のもの)
農業、林業、漁業、製造業、情報通信業、運輸業、卸売・小売業、不動産業(建物売買業、土地売買業を除く。)、飲食店・宿泊業、医療、福祉、教育・学習支援業、複合サービス事業、サービス業

それ以外に収益業務については業務要件があります。

<収益業務要件>(医療法人の業務範囲より)
(1)一定の計画の下に収益を得ることを目的として反復継続して行われる行為であって、社会通念上業務と認められる程度のものであること。
(2)医療法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるもの(注)でないこと。
(3)経営が投機的に行われるものでないこと。
(4)当該業務を行うことにより、当該医療法人の開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務の円滑な遂行を妨げるおそれがないこと。
(5)当該医療法人以外の者に対する名義の貸与その他不当な方法で経営されるものでないこと。
(注) 「社会的信用を傷つけるおそれがあるもの」とは、風俗営業、武器製造業、遊戯場などをいいます。

ちなみに金融業や保険業は収益業務として可能な範囲に含まれておりません。
理由としては上記2業種は「資金の融通、保険料の払込・支払いを反復継続して行うため、負債比率が必然的に大きくなり、財務体質を悪化させる可能性がある」という考え方があるからです。
大規模な医療法人では、自法人の従業員の保険加入目的で保険業を行いたいと考える場合もあるようですが出来ません。
(こちらは保険業法の自己契約禁止にも引っかかると思われます。)

話が若干それましたが土地等の賃貸は上記、不動産業に該当するため社会医療法人以外はできない事となりますが、平成27年5月21日の厚労省医政局長通知で一定の要件のもとに認められてることになりました。

<運営管理指導要綱の改正について>(医政発0521第3号・平成27年5月21日・厚生労働省医政局長通知)~一部抜粋~

現在、使用していない土地・建物等については、長期的な観点から医療法人の業務の用に使用する可能性のない資産は、例えば売却するなど、適正に管理又は整理することを原則とする。
その上で、長期的な観点から医療法人の業務の用に使用する可能性のある資産、又は土地の区画若しくは建物の構造上処分することが困難な資産については、その限りにおいて、遊休資産の管理手段として事業として行われていないと判断される程度において賃貸しても差し支えないこと。
ただし、当該賃貸が医療法人の社会的信用を傷つけるおそれがないこと、また、当該賃貸を行うことにより、当該医療法人が開設する病院等の業務の円滑な遂行を妨げるおそれがないこと。
(備考)
・長期的な観点から医療法人の業務の用に使用する可能性のある資産とは、例えば、病院等の建て替え用地であることなどが考えられること。
・土地を賃貸する場合に、賃貸契約が終了した際は、原則、更地で返却されることを前提とすること。
・新たな資産の取得は医療法人の業務の用に使用することを目的としたものであり、遊休資産としてこれを賃貸することは認められない
こと。
・事業として行われていないと判断される程度とは、賃貸による収入の状況や貸付資産の管理の状況などを勘案して判断するものである
こと。
・遊休資産の賃貸による収入は損益計算書においては、事業外収益として計上するものであること。

簡単に言うと将来的に医療法人の業務の用に供する資産が遊休資産になっている場合には、本業に支障をきたさなければ賃貸しても構いませんよという内容です。

ちなみにあくまでも収益業務の例外規定とみなされており、付随業務には該当しないのでお間違えの無いように。

<付随業務>(医療法人の業務範囲より)~抜粋~
開設する病院等の業務の一部として又はこれに附随して行われるものは収益業務に含まれず、特段の定款変更等は要しません。
(附随業務として行うことが可能)

病院等の施設内で当該病院等に入院若しくは通院する患者及びその家族を対象として行われる業務又は病院等の職員の福利厚生のために行われる業務であって、医療提供又は療養の向上の一環として行われるもの。
したがって、病院等の建物内で行われる売店、敷地内で行われる駐車場業等は、病院等の業務に附随して行われるものとされ、敷地外に有する法人所有の遊休資産を用いて行われる駐車場業は附随する業務に含まれないものとして取り扱います。

いずれにしても、遊休資産でも固定資産税分ぐらいの収益はあげておきたい所かと思いますので、要件の合致する遊休資産をお持ちの医療法人は活用されてみてはいかがでしょうか。







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